2016 Fiscal Year Annual Research Report
記憶形成、固定、想起における海馬背側CA1セルアセンブリの長期可視化
Publicly Offered Research
Project Area | Principles of memory dynamism elucidated from a diversity of learning systems |
Project/Area Number |
16H01292
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
林 康紀 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, チームリーダー (90466037)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | セルアセンブリ / 海馬 / 報酬学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
海馬は記憶の形成に重要であるが、長期記憶の想起には必要ないと考えられてきた。しかし、近年の光遺伝学的な研究からはそれに疑問を投げかける向きがあり、この点の決着はついていない。そこで、本実験では、海馬セルアセンブリを数日から数ヶ月の単位で1細胞の解像度、かつ約1000個を同時に観察できる実験系を開発し、海馬セルアセンブリが記憶形成に伴いどのように形成されていくか、また近時及び遠隔記憶想起の際に同じセルアセンブリが再活性化されるか、記憶が再構成、あるいは消去される時にセルアセンブリはどうなるのか、再記憶の際に同じアセンブリが用いられるのか、報酬系がいかに記憶を強化するかなど、これまでは不可能だったセルアセンブリの基本性質を観察していく。 本年度は、場所記憶想起課題における、細胞同士の発火の時間パタン類似性の比較ならびに同期発火する細胞の検索を行った。ここでの同期発火する細胞の定義としては、完全にピークが一致する細胞に加え、+/-1秒の範囲で順に発火する細胞も検索した。まず、発火パタンの類似性をコンピュータープログラムで検出したところ、細胞検出時のエラー、すなわち一つの細胞がセグメンテーションのエラーにより、2つの細胞として検出されている例、また隣接した細胞の蛍光が混入して来る例が観察された。これを修正することを試み、最終的に細胞の中心のみ検出し、10μm以内にある細胞同士の発火の類似性は検出時のエラーが完全には避けられないため、除外した。 これにより、同時発火する神経細胞を検出したところ、ランダム化したデーターと比較して有為に同期発火する細胞が検出できることがわかった。これは特に、報酬を与えた直後に発火する細胞に多く観察され、報酬に対する記憶成立に関与しているのではないかと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
記憶に関するセルアセンブリの性質が明らかになりつつあるため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、同期発火したセルアセンブリの長期的な観察を行なっていく。 これまで、1個の細胞を数週間にわたり長期的に観察することに成功しており、すでに発火した細胞が記憶の成立に伴いどのように変化していくかの時系列データーを得ている。さらに、報酬場所を移した場合、また報酬を無くした場合のデーターもえている。これらのデーターから同期発火する細胞を検出していく。例えば、次のようなことを検討していう。 同期発火する細胞は、外界が変化してもいつも同期発火するのか、あるいは外界が変化すると同期発火しなくなるのか。同期発火する細胞は、少なくとも500μm四方に同期する細胞が見えない細胞と比較して、安定性が異なるのか。報酬に対する記憶の固定化に必要だとしたら、報酬がなくなったらどのように反応するのか。 また、モノアミン系の同期発火への関与を、光遺伝学的な手法と組み合わせることによって検討していく。
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