2016 Fiscal Year Annual Research Report
選択的遺伝子領域の動的ヘテロクロマチン化誘導機構
Publicly Offered Research
Project Area | Dynamic chromatin structure and function |
Project/Area Number |
16H01295
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
落合 恭子 東北大学, 医学系研究科, 助教 (10455785)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 遺伝子発現制御 / 転写因子 / エピゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、転写因子IRF4による特異的DNAモチーフ認識を起点としたへテロクロマチン化誘導機構を解析する。IRF4はB細胞の形質細胞分化誘導に必須であり、この分化過程ではヘテロクロマチン構造である車軸状核形成が誘導される。先行研究より、形質細胞分化を誘導したプライマリーB細胞におけるIRF4複合体を精製し、HP1(heterochromatin protein 1)を含むヘテロクロマチン関連因子を同定した。本研究で着目するPC4(positive activator 4)はIRF4複合体に含まれ、RNA Pol IIによる転写活性化の協調的作用およHP1との結合を伴うへテロクロマチン化への関与が示されているが、免疫系細胞における機能はほとんど明らかとなっていない。 PC4のB細胞分化における重要性を検討するため、B細胞特異的PC4遺伝子ノックアウト(cKO)マウスを作成し、B細胞分化および形質細胞分化の異常有無をFACS解析にて検討した。その結果、野生型マウスと比較しPC4 cKOマウスでは骨髄・脾臓における成熟B細胞数の顕著な減少、形質細胞分化誘導時における分化頻度の低下が認められた。PC4 cKOにおける遺伝子発現異常を明らかにするため、成熟B細胞を用いたマイクロアレイ解析をおこなった。すると、野生型と比較しPC4 cKO成熟B細胞では他血球系細胞への分化誘導因子の異所的発現が認められた。 これらの結果より、PC4による遺伝子抑制機能はB細胞分化に重要であると推測された。そこで、形質細胞分化誘導に伴ったIRF4-PC4複合体が関連するヘテロクロマチン化標的遺伝子の抽出を試みた。ChIPシークエンス法を用い、分化誘導刺激を与えた脾臓B細胞におけるPC4およびヘテロクロマチンマーカーであるヒストン3リジン9トリメチル(H3K9me3)修飾のChIPシークエンスを遂行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始時、B細胞特異的なPC4コンディショナルノックアウト(cKO)マウスとしてCD19-Cre:PC4 floxを用いた解析を計画したが、CD19-Creではときに標的遺伝子欠損の効率が不十分であることがわかった。そこで、近年B細胞特異的ノックアウトとして用いられるようになってきたMb1-Creを理研・黒崎知博教授より分与いただいた。CD19-CreマウスではプレB細胞からの標的遺伝子欠損が生じるが、Mb1-CreではプレB細胞よりも早いB細胞段階であるプロB細胞初期からの標的遺伝子欠損が生じる。そこで、Mb1-Cre:PC4 floxマウスを樹立して分化異常の有無を検討した。すると、Mb1-Cre:PC4 floxマウスではCD19-Cre:PC4 floxマウスよりも重度のB細胞分化障害を認められ、形質細胞分化頻度も顕著に減少していた。これらの新知見から本研究のPC4 cKOマウスを用いた解析はMb1-Cre:PC4 floxマウスに移行したが、遂行する研究内容に大きな変更はなくマイクロアレイ解析を含め、初年度に計画していた解析は既に完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、分化誘導時におけるIRF4・PC4・LBR・H3K9me3の経時的核内局在変化の定量化を遂行し、転写因子依存的な選択的遺伝子領域ヘテロクロマチン化モデルの構築を目指す。 選択的遺伝子領域のクロマチン構造変換の動的モデルを構築するために、初年度に得られたPC4およびH3K9me3修飾のChIPシークエンスデータと取得済である転写因子IRF4 ChIPシークエンスデータを統合解析する。そして、IRF4によって選択される遺伝子領域のうちPC4依存的かつヘテロクロマチン化される遺伝子領域を抽出する。さらにこれらの遺伝子領域のうち、形質細胞分化にともなって発現が低下する遺伝子群を抽出する。 抽出した遺伝子制御領域のヘテロクロマチン化を追跡するために、定量免疫染色法を活用する。標的遺伝子領域に対するDNA-FISHプローブを設計し、分化時における経時的な核内局在変化を検討する。このとき、IRF4、PC4、IRF4-PC4複合体に含まれる因子であるHP1や核膜タンパク質などの共染色を行い、IRF4-PC4複合体による遺伝子領域選択的なヘテロクロマチン化の分子機構を明らかにする。
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