2016 Fiscal Year Annual Research Report
Maintenance of genomic stability by the heterochromatin-binding complex including a novel molecule, CAMP
Publicly Offered Research
Project Area | Dynamic chromatin structure and function |
Project/Area Number |
16H01296
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田中 耕三 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (00304452)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 細胞・組織 / DNA損傷応答 / ヘテロクロマチン / 染色体分配 / 癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
クロマチンの動的な構造制御にはヘテロクロマチン形成が重要な役割を果たしており、これにはHP1を含むヘテロクロマチン結合複合体が関与している。我々はHP1と複合体を形成する新規分子CAMPが、染色体分配に必須であることを明らかにした(EMBO J 2011)。CAMPはHP1の他にDNA損傷応答に関与するRev7, 染色体分配に関与するPOGZと複合体を形成しており、我々はCAMPを含む複合体がDNA損傷応答と染色体分配にはたらいていることを明らかにしてきた(H26~H27新学術領域研究)。本研究では、CAMPを含む複合体がゲノム安定性に果たす役割を、細胞及び個体レベルで明らかにすることを目的とする。H28年度には以下のような成果が得られた。 1. CAMPとRev7, HP1, POGZとの複合体の構造解析 昆虫細胞で発現させて精製したCAMP, Rev7, HP1, POGZが複合体を形成することを確認した。CAMPとPOGZは共にC末端を介して結合することがわかった。また高速AFMでの解析により、CAMPの中央部分が天然変性領域であることが明らかになった。 2. CAMPを含む複合体の機能の細胞レベルでの解析 Rev7, POGZがDNA2本鎖切断の修復に関与するという報告があることから、CAMPがDNA2本鎖切断の修復に関与する可能性について解析を行った。その結果、CAMPの発現抑制細胞はcamptothecinに対して高感受性であることが明らかになった。 3. CAMPを含む複合体の機能の個体レベルでの解析 小児の発達障害でCAMPの変異が見られることを報告した(Hum Mutat, 2016)。CAMPの変異はC末端領域の欠失を生じることから、POGZとの複合体形成が神経系の発達に重要である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CAMPとRev7, HP1, POGZとの複合体の構造解析については、これらのタンパク質を高純度で精製する手法が確立され、複合体の解析が順調に進んでおり、CAMPとPOGZは共にC末端を介して結合することが明らかになっている。またCAMPの両端のZnフィンガー領域に挟まれた中央部分が天然変性領域であることが高速AFMでの解析により確認された。今後複合体についても高速AFMでの解析を行うことで、その構造が明らかになることが期待される。 CAMPを含む複合体の機能の細胞レベルでの解析については、CAMPがRev7, POGZ 同様DNA2本鎖切断の修復に関与する可能性について解析を行い、CAMPの発現抑制細胞がcamptothecinに対して高感受性であることを明らかにした。今後CAMPがどのようにしてDNA2本鎖切断の修復に関与するのかについて検討を行う予定である。 CAMPを含む複合体の機能の個体レベルでの解析については、国際共同研究により小児の発達障害でCAMPの変異が見られるという重要な報告を行った(Hum Mutat, 2016)。他に2つのグループから同様の報告がなされており、CAMPが神経系の発達に重要な役割を果たしていることが示唆される。我々は3つの報告の中で唯一CAMPの変異の機能的な影響について解析し、CAMPとPOGZの複合体形成が神経系の発達に重要である可能性について言及した。 これらの成果から判断して、本研究課題はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の成果をふまえ、平成29年度には以下の実験を行う。 1. CAMPとRev7, HP1, POGZとの複合体の構造解析 CAMPはRev7, HP1, POGZと結合することがわかっており、昆虫細胞で発現させて精製したこれらの蛋白質が複合体を形成することを明らかにしている。これらの複合体を高速AFMにより観察し、CAMPの天然変性領域の構造変化を調べる。また天然変性領域のリン酸化部位に変異を導入したCAMPを高速AFMで観察し、リン酸化が天然変性領域の構造変化に与える影響を調べる。 2. CAMPを含む複合体の機能の細胞レベルでの解析 CAMPと結合するRev7, POGZがDNA2本鎖切断の修復に関与するという報告があることから、CAMPがDNA2本鎖切断の修復に関与する可能性について解析を行う。またCAMPのゲノム上の局在についてChIP-seq法で得られたデータを解析することにより明らかにし、HP1やヘテロクロマチンマーカーであるH3K9me3の局在と比較する。 3. CAMPを含む複合体の機能の個体レベルでの解析 CAMPの変異が知的発達障害で見られたことから、CAMPの神経発達への関与を検討する。具体的には、CAMPの脳での発現を免疫染色法で調べる。またCAMPのホモノックアウト(出生直後に死亡)の脳切片を観察し、種々の細胞染色により神経系の異常を解析する。またCAMPのヘテロノックアウトマウスの行動実験を行い、異常行動の有無を解析する。
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[Journal Article] De Novo Truncating Mutations in the kinetochore-microtubules attachment gene CHAMP1 Cause Syndromic Intellectual Disability2016
Author(s)
Isidor, B, Kury, S, Rosenfeld, J, A, Besnard, T, (28 authors), Iemura, K, Ikeda, M, Tanaka, K, Bezieau, S
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Journal Title
Hum Mutat
Volume: 37
Pages: 354-358
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Presentation] 染色体不安定性とがん2016
Author(s)
田中耕三
Organizer
第75回日本癌学会学術総会
Place of Presentation
パシフィコ横浜(横浜市・神奈川県)
Year and Date
2016-10-06 – 2016-10-08
Invited
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