2016 Fiscal Year Annual Research Report
クロマチン構造変化の可視化によるニューロン分化遺伝子群制御機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Dynamic chromatin structure and function |
Project/Area Number |
16H01297
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岸 雄介 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 講師 (00645236)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | クロマチン / ニューロン |
Outline of Annual Research Achievements |
クロマチン動構造公募班において、ニューロン分化過程におけるクロマチン構造変化とその意義を明らかにすることを目指し、以下のような結果が得られた。 1, in vivoニューロン分化過程におけるオープンクロマチン領域の変化:in vivoにおけるニューロン分化過程を追跡する新しい実験系を確立し、その手法を用いて採取した細胞でRNA-seq、DNaseI-seqを行った。結果、非常に大きな範囲でオープンクロマチン領域が変化していることを見出した。現在論文投稿準備中である。またさらに、single cell ATAC-seqやsingle cell RNA-seqも行っており、さらに高解像度にニューロン分化過程を追跡する実験系を構築している。 2, 大脳新皮質発生におけるヒストンH1bの役割:ヒストンH1b抗体を用いて大脳新皮質を染色したところ、限られたニューロンサブタイプでのみで発現が観察され、大脳新皮質ニューロンにおいてヒストンH1bが何らかの役割を果たしていることが示唆された。そこで、H1bのノックアウトマウスを作製し、現在、H1bのニューロンにおける役割をin vitro、in vivo両方で解析しているところである。 3, クロモセンター形成におけるmajor satellite領域の役割:以前ニューロン文化過程においてMajor satellite領域からの転写が変化することを明らかにしていたため、その役割を明らかにすべくmajor satellite領域から強制的に転写を誘導するdCas9-VP160を用いた系を確立した。この手法と観察された表現型について、現在論文投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
以下のように、当初計画していた内容による結果に加えて、当初予期しなかった新しい結果が得られた。 まず、研究実績の概要1に記したように当初予定していたDNase-seqを行い、そこからニューロン分化過程でのダイナミックなクロマチン構造変化を明らかにした。これにより、遺伝子発現変化に相関したクロマチン構造変化に加え、遺伝子発現の準備状態のための構造変化も明らかにすることができた。 H1に関しては、当初H1bのリン酸化修飾に注目していたが、予想に反してH1bそのものの発現量がニューロンの種類ごとに異なることがわかった。H1サブタイプが特定の細胞で機能しているという報告は極めて少なく興味深いと考えている。 Major satelliteに関しては、ニューロン分化過程での機能を調べるために過剰発現のシステムを構築したが、その過剰発現の確認の過程で線維芽細胞のクロマチン構造に異常が出ていることがわかった。Major satelliteからの転写がクロマチン構造に影響を与えるという結果は非常に興味深く、クロマチン構造の基本的骨格の構築にMajor satelliteが役割を果たすという新しい結果を示唆していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
いずれのプロジェクトに関しても、論文発表を目指して以下のことを行う予定である。 DNase-seqの結果に関しては、データ解析を行いつつ、さらに高解像度でクロマチン構造を明らかにすべくsingle cell ATAC-seqやsingle cell RNA-seqを実施している。こちらの解析も進める。 H1bについては、H1bの発現量の差がニューロン機能にどう関わるかを、ノックアウトマウスの解析や過剰発現を行うことで明らかにする。 Major satelliteに関しては、線維芽細胞での変化を論文にまとめつつ、ニューロン分化での機能解析を行う。
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