2016 Fiscal Year Annual Research Report
DNA修復とクロマチン制御の統合的理解によるがん治療への応用
Publicly Offered Research
Project Area | Dynamic chromatin structure and function |
Project/Area Number |
16H01298
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
細谷 紀子 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 講師 (00396748)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | DNA修復 / クロマチン / がん |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、クロマチンの構造変換がDNA損傷応答の制御において重要な役割を果たすことが示唆されているが、その分子機構については不明な点が多い。研究代表者らは、これまでに、生殖細胞において高発現し、正常の体細胞では一切発現しないが、がんにおいて発現レベルが異所性に上昇していることが知られる減数分裂関連分子群の体細胞がんにおける役割についての研究を進め、それらの分子の体細胞での異所性の発現がDNA修復に多様な影響を与え得ることを見い出してきた。例えば、シナプトネマ複合体形成分子群の1つであるSYCE2は体細胞で発現すると、ATM依存性のDNA損傷応答が亢進し、DNA二本鎖切断修復の亢進を来すことを見出した。SYCE2がクロマチンを含む核内微小環境に何らかの作用をすることを介してDNA損傷応答を制御している可能性を考え、平成28年度は、SYCE2の発現によるクロマチン関連分子の核内動態の変化やSYCE2とクロマチン関連分子との相互作用について検討を行った。その結果、SYCE2はHP1alphaと複合体を形成し、HP1alphaの細胞核内でのドメイン形成を阻害することが明らかとなった。一方、トリメチル化H3K9の核内分布はSYCE2の発現によって影響を受けていないことが示唆された。このことから、SYCE2によるHP1alphaの核内局在の変化がSYCE2発現陽性がんにおけるDNA損傷応答と修復の制御において重要な役割を果たしている可能性を考え、その分子機構についてさらに検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SYCE2がHP1alphaと複合体を形成して核内微小環境を制御している可能性を示すことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
SYCE2の発現によるヘテロクロマチン形成分子の複合体形成の変化の有無やSYCE2とHP1alpha以外のクロマチン形成分子との相互作用の有無の解析を行い、変化が見られた場合には、その変化がDNA損傷応答や修復に及ぼす影響を調べることにより、SYCE2によって形成される核内微小環境とDNA損傷応答やDNA修復との関係を明らかにすることを目標とする。SYCE2以外の減数分裂関連分子でがんにおいて異所性に発現しているものについても、その発現がDNA修復に及ぼす影響に加え、クロマチン関連分子の核内動態への影響について検討を行う。
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