2016 Fiscal Year Annual Research Report
人工触媒システムを用いたヒストンアシル化の機能解析
Publicly Offered Research
Project Area | Dynamic chromatin structure and function |
Project/Area Number |
16H01300
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川島 茂裕 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 特任講師 (40508115)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ヒストン / 人工触媒システム / アセチル化 / アシル化 / ヌクレオソーム / クロマチン |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒストンは、クロマチンを構成する主要なタンパク質であり、DNAを折りたたんで核内に収納する役割を持つだけでなく、様々な翻訳後修飾をうけることにより、多様なヌクレオソーム構造とそれに伴う遺伝子転写等の動的制御を可能にしている。ヒストン翻訳後修飾の研究は反応を触媒する酵素の発見・解析とともに精力的に行なわれてきたが、近年の質量分析技術の発展により、ヒストンはこれまで想像していた以上に複雑な翻訳後修飾を受けていることが明らかになってきた。興味深いことに、塩基性タンパク質であるヒストンに数多く含まれるリジン残基には、これまで最も研究されてきたアセチル化だけではなく、ブチリル化やマロニル化等の様々な種類のアシル化修飾が同定され、ヒストンアシル化による精密な動的クロマチン制御が示唆された。しかしながら、これらヒストンアシル化修飾の機能についてはほとんど知見がない。我々はヒストンのリジン残基選択的にアシル化修飾を導入する人工化学触媒システムの開発を行い、その人工化学触媒システムを用いてヌクレオソームにリジン残基選択的アシル化を導入することにより、機能未知のヒストンアシル化の動的クロマチン制御における機能を明らかにすることを目的に本研究を行なった。平成28年度は、ヒストンを選択的にアセチル化する二種類の人工化学触媒系(触媒+アセチルドナー)の開発に世界で初めて成功した。一つは、ヌクレオソームのDNAに結合し、ヒストンテイル領域の複数のリジン残基を広範囲にアセチル化する人工化学触媒であり、もう一つは、ヌクレオソームの中の特定の領域に結合し、リジン残基を位置選択的にアセチル化する人工化学触媒である。これらの人工化学触媒系はドナーを変えることにより、アセチル化だけではなく他の様々なアシル化をヒストンのリジン残基に導入でき、これまで機能未知であった他のアシル化のの機能の一旦を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
胡桃坂仁志教授(早稲田大学、現東京大学)との領域内共同研究を通じて、ヒストンを選択的にアセチル化する二種類の人工化学触媒系(触媒+アセチルドナー)の開発に世界で初めて成功した。それぞれ論文をchemおよびJournal of the American Chemical Societyに投稿し、査読者からは良好な評価を得て、平成28年度内にリビジョンの投稿まで進んでいる。以上から、当初の計画以上に進展している、と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒストンを選択的にアセチル化する二種類の人工化学触媒系(触媒+アセチルドナー)の開発に関しての論文(平成28年度内にchemおよびJournal of the American Chemical Societyにリビジョン投稿済)のアクセプトを目指す。また、引き続き人工化学触媒系の開発・改善を行い、ヒストンアシル化の機能および制御の解明を目指して研究を推進する。
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