2016 Fiscal Year Annual Research Report
セントロメアにおけるクロマチン構造制御の分子基盤
Publicly Offered Research
Project Area | Dynamic chromatin structure and function |
Project/Area Number |
16H01304
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
有吉 眞理子 京都大学, 工学研究科, 特定研究員 (80437243)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | クロマチン / X線結晶解析 / セントロメア / タンパク質 / 染色体分配 |
Outline of Annual Research Achievements |
キネトコア形成領域であるセントロメアは、正常な染色体分配と細胞周期におけるクロマチン動態において重要な役割を担っている。正常なセントロメア構築の核となるのは、ヒストンH3 バリアントであるCENP-Aが形成する特徴的なCENP-Aヌクレオソーム構造であり、複製後のセントロメア領域へのCENP-Aの取り込みは細胞周期と同調して制御されている。本研究では、CENP-Aをセントロメア領域のヌクレオソームに適切に配置、維持するための CENP-A取り込みのライセンス化因子であるMis18複合体の構造と機能に関して、以下の2つの項目について研究を行った。 項目1 Mis18複合体コアの構造機能解析: Mis18複合体は、Mis18alpha, Mis18betaおよびM18BP1(Mis18 binding protein 1/KNL2)の3つのタンパク質から構成される。第一に、Mis18α-Mis18β複合体の安定なコア領域を同定、複合体として精製した。生化学的解析と電子顕微鏡による単粒子解析の結果から、Mis18αとMis18βが6量体、もしくは8量体の高次の会合状態を取ることが示された。現在、低分解能の結晶を得られており、X線回折実験に適した結晶を得るために結晶化条件の最適化を行っている。また、これまでに、安定な3者複合体コアを形成に必要なM18BP1の最小領域を同定し、3者複合体の再構成に成功している。 項目2 M18BP1のセントロメア局在の構造決定因子の解明: Mis18複合体において、M18BP1は、セントロメア領域との結合インターフェースとしての役割を担う。本項目では、M18BP1とセントロメアタンパク質もしくはヌクレオソームとの相互作用解析を行った。これまでにこのSANTAドメインを含む領域とヌクレムソームの結合を示唆する結果を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、以下の2つの研究項目を実施し、 Mis18複合体によるCENP-A 取り込みのライセンス化の分子機構を明らかにすることを計画した。 項目1 Mis18複合体コアの構造機能解析:組換えタンパク質として発現・精製したヒト由来Mis18タンパク質を用いて、Mis18α-Mis18β複合体の安定なコア領域を再構成し、結晶化を行った。すでに得られていたMis18αとMis18βの2者複合体の低分解能 (8-10 A)の結晶の改善を行った。X線回折実験に適した結晶を得るためのさらなる改善が必要ではあるが、末端領域を欠失させた変異体を用いることによって、分解能の向上が見られた。今後継続して結晶化条件の改善を行っていく。一方、2者複合体の電子顕微鏡による単粒子解析を行い、その高次の会合状態にあることを示した。また、現在、M18BP1を含む3者複合体の結晶化を行っている。 研究項目2: M18BP1タンパク質のセントロメア局在制御の構造基盤 セントロメア領域との結合インターフェースとしての役割を担うM18BP1には、進化的に保存されたSANTドメインとSANTAドメインが存在する。このドメインに注目して、構造機能解析を行った。これまでに研究代表者自身がSANTAドメインの結晶構造を決定し、機能に重要だと考えられる領域を見出しているが、その機能は明確になっていない。今回、細胞抽出液を用いたpull-down assayや免疫沈降法を用いて、SANTA およびSANTドメインと相互作用するタンパク質の同定を試みた。その結果、新規の知見として、本ドメインを介したホモ二量体形成が示唆された。また、SANTAを含む領域のヌクレオソームへの結合を見出している。
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Strategy for Future Research Activity |
項目1[Mis18複合体コアの構造機能解析]については、継続してMis18複合体の結晶化条件の改善を行う。これまで用いてきたヒト以外の種由来のMis18タンパク質の発現系を構築しており、より安定な複合体試料を得る可能性を検証する。 また、結晶化実験と並行して、電子顕微鏡による単粒子解析やX線小角散乱測定を用いて構造情報を得ることを計画している。 項目2[M18BP1タンパク質のセントロメア局在制御の構造基盤]については、CENP-Aヌクレオソームを再構成し、M18BP1及びMis18複合体との結合を生化学的な手法を用いて解析することを計画している。
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