2016 Fiscal Year Annual Research Report
ヘテロクロマチン形成とクロマチン環境
Publicly Offered Research
Project Area | Dynamic chromatin structure and function |
Project/Area Number |
16H01320
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
佐渡 敬 近畿大学, 農学部, 教授 (70321601)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | クロマチン / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
SmcHD1は不活性X染色体や他のヘテロクロマチン領域の制御に寄与するエピジェネティック制御因子で,その欠損はヘテロクロマチンの安定な維持に大きな影響をおよぼす.しかし,我々は一旦正常に構築されたヘテロクロマチンはSmcHD1の有無にかかわらず,安定に維持されることことを見出し,これがヘテロクロマチンの維持というよりはその維持に重要なエピジェネティック修飾の構築に必要な因子であると考えるようになった.そこで,分化段階の異なるESC,EpiSC,MEFを用いて,不活性が起こる前のX染色体,未分化な多能性細胞がもつ不活性化X染色体,分化を遂げた細胞の不活性X染色体のそれぞれのエピジェネティックな状態を野生型とSmcHD1欠損株の間で詳細に比較する.MEFで行ったRNA-seq,ChIP-seq(H3K9me3,H3K27me3)同様の解析をEpiSCで行うため,亜種系統間のF1ハイブリッドであるE5.5~6.5日胚のエピブラストからその樹立を進めてきたが,樹立できたのはまだ数株で,必要な株数の樹立には至っていない.また,サンプルの調製に当たっては,通常フィーダー細胞上で培養するEpiSCをフィーダーのない状態で培養する適切な手法についても検討を重ねている.さらに,ESCをEpiSC様の細胞へと誘導したEpiLCはESCとEpiSCの中間的な細胞ととらえることができるか検討した.EpiLCでは一方のX染色体がXistの発現を亢進し始めているものの,X染色体連鎖遺伝子のサイレンシングには至っていないことから,これをESCとEpiSCの中間の細胞と考えることの妥当性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
B6系統との間で多くのSNPが利用できるJF1系統のX染色体を持つSmchd1欠損ヘテロ接合体のオス[X-JF/Y; Smchd1+/-]とB6系統の遺伝的背景をもつXistおよびSmchd1の二重欠損のヘテロ接合体[Xist+/-; Smchd1+/-]をそれぞれ交配により作製し,両者を交配することで,常にJF系統由来のX染色体が不活性化したEpiSCの樹立を試みてきた.これまでに,[Xist+/-; Smchd1-/-]が1株樹立できたが,対照となる[Xist+/-; Smchd1+/+]はまだ得られていない.交配に用いるXistおよびSmchd1の二重欠損メスマウスの数が律速となっていて,これまでのところEpiSCの樹立については必ずしも順調には進んでいない.[Xist+/-; Smchd1+/-]のマウスを得るための交配数を増やし,十分な数のメスを得る準備を進めている. 樹立できたものの実験に用いることのない遺伝子型のEpiSCを利用して,フィーダー細胞なしの培養条件の検討を重ねている.1回程度の継代であれば,フィーダー細胞を使ったコンディション培地の利用で対処できると思われるが,免疫染色を行う際に細胞をガラス表面に接着させる必要のある場合は,さらなる検討が必要である. さらに,ESCをEpiSC様の細胞へと誘導したEpiLCはESCとEpiSCの中間的な細胞ととらえることの妥当性についても検討した.EpiLCでは一方のX染色体がXistの発現を亢進し始めているものの,X染色体連鎖遺伝子のサイレンシングには至っていないことから,EpiLCをESCとEpiSCの中間の細胞と考えることの妥当性が示唆された.
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Strategy for Future Research Activity |
EpiSCの樹立をつづけ,RNA-seqおよびChIP-seqを行う.また,これととともにESCの樹立も行う.ESCをEpiSC様の細胞へと分化させたEpiLCでは,X染色体不活性化は開始されていると考えられるものの,十分な不活性化には至っていない.したがって,EpiLCをESCとEpiSCの間の状態と考え,X染色体のエピジェネティックな状態やトランスクリプトームについても解析する.このようにして,正常なESC,EpiLC,EpiSC,MEFについてトランスクリプトームおよびX染色体のエピジェネティックな状態を理解し,不活性化するX染色体のクロマチンがどのような変化遂げるか明らかする.一方で,SmcHD1の欠損を持つこれら4種の細胞についても同様の解析を行い,SmcHD1が不活性化されるX染色体のエピジェネティックな状態の確立にどのように寄与するのかを明らかにする.これにより,SmcHD1がX染色体の不活性状態を安定に維持するためのクロマチン環境の確立にどのような効果を発揮しているか検討する.また,細胞の分化過程でクロマチンは,その可塑性を漸次に失っていき,最終的に堅牢できわめて安定な状態を確立するわけであるが,その分子基盤についてもこれらの結果から考察する.
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Control of Chromosomal Localization of Xist by hnRNP U Family Molecules.2016
Author(s)
Sakaguchi, T., Hasegwa, Y., Brockdorff, N., Tsutusi, K., Tsutsui, K., *Sado, T., and *Nakagawa, S
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Journal Title
Developmental Cell
Volume: 39
Pages: 11;12
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Maintenance of Xist imprinting depends on chromatin condensation state and Rnf12 dosage in mice.2016
Author(s)
Fukuda, A., Mitani, A., Miyashita, T., Sado, T., Umezawa, A., and *Akutsu, H.
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Journal Title
PloS Genet.
Volume: 12(10)
Pages: e1006375
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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