2016 Fiscal Year Annual Research Report
Microglia in autism
Publicly Offered Research
Project Area | Glial assembly: a new regulatory machinery of brain function and disorders |
Project/Area Number |
16H01329
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小山 隆太 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 准教授 (90431890)
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Project Period (FY) |
2016-06-30 – 2018-03-31
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Keywords | マイクログリア / シナプス / 自閉症 / BDNF |
Outline of Annual Research Achievements |
発達期の脳では、脳内免疫細胞であるマイクログリアが不要なシナプスを貪食により刈り込む。一方で、成体期の脳におけるシナプス再編成にマイクログリアが関与する可能性とそのメカニズムは未解明である。本研究では、シナプス密度の過度な上昇が病因の一つとされる自閉スペクトラム症 (autism spectrum disorder, ASD) をモデルとして、成体脳におけるマイクログリアのシナプス刈り込み能力を海馬歯状回―CA3野神経回路に着目し検証した。特に、運動がASD症状を緩和する可能性が示唆されているため、マウスの自発的な運動がマイクログリアによるシナプス刈り込みを誘導してシナプス密度を正常レベルに戻す可能性を検証した。 本研究では、ASD様行動を示す母体免疫活性化モデルマウス(poly(I:C)マウス)を利用した。コントロールマウスでは、歯状回顆粒細胞の軸索である苔状線維のシナプスは生後2-4週において除去された。一方で、poly(I:C)マウスでは、苔状線維シナプスが除去されず、成体期において苔状線維シナプス密度が増加していた。また、成体期の運動により、poly(I:C)マウスにおいてシナプス密度がコントロールレベルにまで減少した。 次に、これらの現象へのマイクログリアの関与を検証した。まず、発達期のpoly(I:C)マウスではマイクログリアによるシナプスの貪食度合いが減少していた。また、成体期の運動により、貪食度合いが増加した。さらに、運動と同時期にマイクログリアを抑制したところ、運動によるシナプス密度の減少が抑制された。 以上の結果より、poly(I:C)マウスにおいて、成体期における自発的な運動が海馬のマイクログリアを活性化させ、シナプスの刈り込みを誘導することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自閉症モデルマウスにおけるシナプスレベルでのE/Iバランスの破たんを、in vivoおよびin vitroの系で再現良く捉えている。具体的には、海馬における興奮性上昇を、組織学や電気生理学を含む複数の手法によって確認することができた。 さらに、自閉症モデルマウスにおける興奮性シナプス除去の不全メカニズムとして、マイクログリアによるシナプス貪食の不全が起こることを明らかにした。そして、この現象が神経活動に依存することを突き止めた。さらに、マウスに運動をさせることにより、神経活動を上昇させ、結果としてマイクログリアを介した興奮性シナプス除去の誘導に成功した。 以上より、自閉症におけるシナプスE/Iバランスの興奮性への傾斜の細胞メカニズムを一定度合い明らかにすることに成功したといえる。また、環境の変化(運動)によってシナプス貪食を誘導できたことは、将来の自閉症の治療法に貢献しうる知見となる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、マイクログリアによるシナプスの貪食にBDNFが関与する可能性をより詳細に検証する。マイクログリアとニューロンの相互作用にBDNFが関与する可能性の有無やそのメカニズムは、神経科学の中のトピックでもある。この検証を可能にするために、BDNFをRNA干渉によってノックダウンするための遺伝子ベクター等を準備済みである。実験系としては、主に海馬切片培養系を用いて、マイクログリア-ニューロン相互作用のタイムラプスイメージングなども行う。
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[Presentation] てんかんとグリア細胞2016
Author(s)
小山隆太、池谷裕二
Organizer
生体機能と創薬シンポジウム2016
Place of Presentation
東北大学(宮城県 仙台市)
Year and Date
2016-08-24 – 2016-08-24
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