2016 Fiscal Year Annual Research Report
ミクログリアによるシナプス活動修飾と神経回路の空間的活動制御
Publicly Offered Research
Project Area | Glial assembly: a new regulatory machinery of brain function and disorders |
Project/Area Number |
16H01346
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
和氣 弘明 神戸大学, 医学研究科, 教授 (90455220)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ミクログリア / 免疫 / 2光子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
高次脳機能に異常を呈する発達障害・精神疾患の病態の解明および治療法の開発は喫緊の課題である。近年、体循環系の炎症が脳機能と相関することが着目されている。すなわち、発達障害・統合失調症と腸内細菌・母胎感染・炎症性疾患との相関や歯周炎と認知機能障害の関係などが知られている。そこで中枢神経系の免疫細胞であるミクログリアに着目し、その新規生理機能を明らかにするとともに機能破綻によって引き起こされる脳機能異常を明らかにする。これまで私たちはミクログリアが1時間に1度5分程度ミクログリアがシナプスに接触することによって、ミクログリアがシナプス活動を監視すること(Wake et al., J. Neurosci 2009.)および発達早期においてミクログリアが活性化体であることに着目し、そのシナプスの形成を促進する生理機能があることを明らかにしてきた (Miyamoto et al., 2016, Nature Commun)。さらにミクログリアの活性化を誘導することによってレバー引きによる水報酬学習の運動学習障害が起きること、またその神経回路基盤としてレバーを引くという行動にトリガーして発火する神経細胞のポピュレーションが低下することがわかった。さらにdayXにおいてレバー引きにトリガーして発火する神経細胞のポピュレーションは、次のdayX+2において上昇するレバー引きの成功率と相関することから、レバー引きに同期して発火する神経細胞のポピュレーションが低下することが学習効率を阻害することが明らかとなった。このような異常はミクログリアを除去した後際にも同様に認められたため、ミクログリアの生理機能が異常な体循環系免疫細胞との相関で失われ、神経回路活動の異常を引き起こすことが明らかとなった。さらにこのミクログリアの生理機能として接触によるシナプス活動修飾を明らかにした
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
想定していたよりもイメージングが順調に進んだため
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Strategy for Future Research Activity |
さらにミクログリアがシナプス活動修飾を介して神経回路活動を空間的制御していることを示すため単一のミクログリアに由来する複数の突起に着目する。現在申請者は対物レンズにピエゾ素子を付けることによって可能となる高速4Dイメージングを行っており、複数の深部断面での同時イメージングが可能である。そこで異なる神経細胞由来の樹状突起状スパインに対して同一のミクログリア由来の突起が及ぼす作用が同一か、異なるかを検証する。ミクログリア特異的にGFPが発現しているマウスの神経細胞にtdTomatoおよびGCaMPを発現させる。由来が異なる神経細胞の樹状突起スパインに対する単一ミクログリアの突起によるその活動修飾を可視化する。活動修飾が同方向に行われるペアのスパインを抽出する。この2つの樹状突起スパインの由来する神経細胞体の活動の相互相関をとることによって、単一のミクログリアが修飾する由来の異なる2つのスパインの神経細胞活動が相互相関するかを観察し、神経回路活動の空間的制御を行うかどうかを検証する。 さらに発達障害・精神疾患の初期において、ミクログリアは活性化していることが知られている。またミクログリアの特定の遺伝子を欠失・変異させることによってこれまで自閉症・強迫性神経障害を発症することが示唆されてきた。ミクログリアの活性化などによる変容はミクログリアの生理機能を損なわせ、神経回路活動の恒常性を破綻させる可能性を持つ。そこで、薬理学的手法および光遺伝学を用いて、ミクログリアを活性化させ、そのシナプス活動制御機構の変化を検出する。前者はLipopolysaccharide(LPS)を使用し、後者に関してはテトラサイクリン依存性にミクログリア特異的プロモーターの下流にチャネルロドプシンを発現するようなマウス(作成済み)を用いて、ミクログリアを光刺激によって活性化させそのシナプスに対する機能を検証する
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Research Products
(4 results)