2016 Fiscal Year Annual Research Report
炎症性Th17細胞においてRORγtが認識するリポクオリティ分子機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Quality of lipids in biological systems |
Project/Area Number |
16H01352
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
遠藤 裕介 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任講師 (80612192)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | RORγt / ACC1 / 脂質代謝 / Th17細胞 / リピドミクス解析 / ゲノム編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、Th17細胞のマスター転写因子であるRORγtの脂質リガンドを同定し、Th17細胞分化における脂質代謝の役割を正確に理解することで、脂質・RORγtを標的とした新たな創薬ターゲット・診断ツールの構築を目的とする。平成28年度の一連の研究で、以下に示す3つの新知見を見出した。 1. RORγtの転写活性化能への脂肪酸合成律速酵素ACC1の作用解明:RORγtは転写因子として作用するため、その転写活性化能についてレポーターアッセイで評価することが可能である。CRISPR/Cas9システムによるゲノム編集技術を用いてACC1を欠損させ、RORγtの転写活性化能への影響について解析したところ、その活性化能が1/10以下に低下することを見出した。 2. RORγtのリガンド候補の絞り込み:1の結果に加え、ACC1欠損細胞に脂肪酸代謝物を添加することで、ACC1による脂質合成とRORγt活性化能との関連についての解析を行った。種々の脂質を用いて検討を行ったところ、一価の不飽和脂肪酸がACC1欠損によるRORγtの機能低下を回復させる傾向が認められた。また、これらの細胞についてリピドミクス解析を行ったところ、一価の不飽和脂肪酸から代謝されたリン脂質がACC1欠損細胞で顕著に低下していることを見出した。 3. Th17細胞におけるRORγtの脂質リガンド探索: 1、2の成果を基に、ACC1欠損Th17細胞に一価の不飽和脂肪酸を添加し、その効果について検討したところ予想通り、Th17細胞分化能の回復が認められた。これらの細胞のリピドミクス解析を行ったところ、一価不飽和脂肪酸を含むリン脂質の顕著な低下がACC1欠損群で認められた。これらの一連の成果はACC1によって合成された一価不飽和脂肪酸を含むリン脂質がTh17細胞におけるRORγtのリガンドとして作用していることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要1において、ACC1によるRORγtの転写活性化能への作用について直接的な関与について解明している。また、概要2、3では、リピドミクス解析や代謝物の添加による機能解析を用いて、T細胞株だけでなくTh17細胞においてRORγtの内在性リガンドとなる候補脂質代謝物について絞り込みを行うことができた。実績の概要に示した内容以外においても、これらの候補となる脂質代謝物により、RORγtのターゲットDNAへの結合能・ターゲット遺伝子の誘導能が回復することも示している。これらの成果により、平成28年度の目標であった、RORγtの内在性リガンドとなる脂質代謝物絞り込み・およびこれら脂質代謝物のTh17細胞分化における生理的作用について明らかにすることができ、予定通りの進展状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、昨年度で得られた内容を進展させ、Th17細胞において、(1) RORγtの内在性リガンドとなる脂質代謝物の同定、(2) RORγt脂質リガンドによるマウス病態モデル解析、(3)ヒトTh17細胞におけるRORγtリガンドの同定を行う。具体的には以下に示す推進方策の基、研究を進めていく予定である。 (1)RORγtの内在性リガンドとなる脂質代謝物の同定:平成28年度の研究実績により、RORγtの内在性リガンドとなりうる候補脂質代謝物は絞り込まれた。ここからさらに限定するために、ACC1よりもさらに下流の酵素をゲノム編集技術により欠損させ、RORγtの機能を低下させる経路および、脂質代謝物を選別する。選別された脂質代謝物については、RORγtのリガンド結合ドメインとの結合を直接的に評価するため三次元結晶構造解析を用いて、RORγtの内在性脂質代謝物リガンドを同定する。 (2)RORγt脂質リガンドによるマウス病態モデル解析;はじめに、ACC1の選択的阻害剤TOFAをマウスに投与することにより、Th17細胞依存的な自己免疫疾患マウスモデル EAE及びTh17誘導性の喘息病態が抑制されるか検討する。また、(1)によりRORγtのリガンドとして機能する脂質代謝物が同定されたのち、この代謝物を多く含む食餌をオーダーメイドで外注し、この食餌を10週以上餌与することで、生体内でのTh17細胞誘導能・RORγtの活性能・EAE病態に対する影響について検討を行う。マウス病態モデルについては当研究室で実験系を確立済みである。 (3)ヒトTh17細胞におけるRORγtリガンドの同定:(1)で得られる結果を基に、該当脂質代謝物がヒトTh17細胞分化におけるRORγtの内在性リガンドとして作用するかを、Th17細胞分化能・RORγtの転写活性化能・リピドミクス解析を用いて評価を進めていく。
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[Journal Article] Akt1-mediated Gata3 phosphorylation controls the repression of IFNγ in memory-type Th2 cells.2016
Author(s)
Hosokawa, H., Tanaka, T., Endo, Y., Kato, M., Shinoda, K., Suzuki, A., Motohashi, S., Matsumoto, M., Nakayama, K. I., and Nakayama, T.
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Journal Title
Nat. Commun.
Volume: 7
Pages: 11289(1-12)
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Fatty acid metabolic reprogramming via mTOR-mediated inductions of PPARγ directs early activation of T cells.2016
Author(s)
Angela, M.,* Endo, Y.,* Asou, H. K., Yamamoto, T., Tumes, D. J., Tokuyama, H., Yokote, K., and Nakayama, T.
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Journal Title
Nat. Commun.
Volume: 7
Pages: 13683(1-15)
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Book] Chronic Inflammation Mechanisms and Regulation2016
Author(s)
Endo, Y., Hirahara, K., Shinoda, K., Iinuma, T., Yamamoto, H., Motohashi, S., Okamoto, Y., and Nakayama, T.
Total Pages
701(401-415)
Publisher
SPRINGER NATURE
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