2016 Fiscal Year Annual Research Report
オルガネラ間脂質輸送を介した細胞内脂質クオリティ・ホメオスタシス機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Quality of lipids in biological systems |
Project/Area Number |
16H01356
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
中津 史 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (50360607)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 脂質輸送タンパク質 / イノシトールリン脂質 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞内には、様々なクオリティを持った脂質が、それぞれ独自の特異性をもって異なる生体膜に局在する。この「脂質クオリティのヘテロな細胞内分布」は、細胞の生命維持のみならず種々の生理機能発現の基盤となる。しかし、このヘテロな細胞内脂質クオリティ分布を作り出す輸送機構、そして状況に応じて再配置を制御する感知・維持機構、すなわち、細胞内脂質クオリティのホメオスタシス機構の全容は明らかになっていない。本研究では、脂質輸送タンパク質による小胞体―細胞膜接触部位を介した脂質交換輸送による細胞内脂質クオリティのホメオスタシス機構の解明を目指し、まず小胞体―細胞膜接触部位に局在する新規・脂質輸送タンパク質の候補分子としてORP6を同定した。細胞膜のPI4P合成を担うPhosphatidylinositol 4-kinase IIIα (PI4KIIIα)のノックアウト線維芽細胞では、細胞膜PI4P量が著しく減少し、ORP6は小胞体―細胞膜接触部位に局在できずに細胞質に散在した。したがって、ORP6は細胞膜PI4Pに依存して小胞体―細胞膜接触部位に局在することが明らかになった。またORP6は神経系に比較的強く発現し、神経芽細胞腫由来NG108細胞の神経様突起の先端領域(神経細胞の成長円錐に相当すると考えられている領域)において、小胞体―細胞膜接触部位に局在することが判明した。これらのことから、ORP6は神経細胞の成長円錐において、小胞体―細胞膜接触部位における脂質交換輸送を介して、細胞内脂質クオリティのホメオスタシス制御の一端を担う可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞膜PI4Pに依存して小胞体―細胞膜接触部位に局在する新たな分子ORP6を同定できた。またORP6は神経細胞において比較的強く発現しており、神経細胞の成長をコントロールする成長円錐において、小胞体―細胞膜接触部位に局在することも判明したことから、ORP6は神経細胞の成長を制御する分子である可能性が示唆された。
|
Strategy for Future Research Activity |
ORP6のリガンドは不明であり、これを同定するための脂質結合ドメインの精製が完了した。現在リガンドを解析中である。また、試験管内脂質輸送アッセイおよび神経細胞等の細胞内における脂質輸送機構を解析し、ORP6の脂質交換輸送によって制御される細胞内脂質クオリティのホメオスタシス機構の解明を目指す。
|