2016 Fiscal Year Annual Research Report
高性能光ラベル法による脂質標的分子の同定および結合解析
Publicly Offered Research
Project Area | Quality of lipids in biological systems |
Project/Area Number |
16H01357
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
友廣 岳則 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 准教授 (70357581)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 光アフィニティーラベル / 標的同定 / 脂肪酸 / 化学プローブ / 分子認識 / プロテオミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
内在する脂質メディエーターの生理機能解析に受容体の探索・同定は必須である。本研究では特定不飽和脂肪酸の代謝物関連タンパク質群の同定を目標とし、光アフィニティーラベル法を利用した効率の良い相互作用タンパク質プロファイリング法開発を行う。初年度は、脂肪酸プローブ化が容易な高性能クロスリンカーユニット開発を進めた。Lys側鎖アミノ基やPhe側鎖ベンゼン環にジアジリン基を導入した誘導体の他に、無保護、無触媒でのカップリングが可能なスルホクリック反応を利用するため側鎖にスルホニルアジド基を有するアミノ酸を複数合成した。これと別途作製した光反応性桂皮酸チオエステル誘導体を混合して光反応性アミノ酸誘導体を作製した。スルホクリック反応で形成されたアシルスルホンアミドはsafety-catchリンカーとしてペプチド固相合成に利用されており、アルキル化処理で切断される。この特性はラベルタンパク質の濃縮・精製に極めて有効であり、既にラベルタンパク質での切断活性を確認した。一方、2つの光反応(光クロスリンクと光切断)の制御とリガンド親和性への影響の軽減を狙いo-ヒドロキシ基へ濃縮タグ導入を検討したが、合成した光反応基は不安定であったため開発を断念した。以上の多機能クロスリンカーユニット開発と並行し先行して、濃縮/検出タグであるビオチン基を有するPhe型光反応基を不飽和脂肪酸に導入した光反応性誘導体を作製した。この誘導体による関連酵素のラベルが確認されたことがら、プローブとしての機能を有することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、不飽和脂肪酸代謝に関連したタンパク質群の同定を目標とし、光アフィニティーラベル法を用いた効率の良い相互作用タンパク質のプロファイリング技術を開発する。初年度では複数の多機能光クロスリンカーユニットを開発した。特に側鎖にスルホニルアジド基を有するアミノ酸型リンカーから作製した光クロスリンカーユニットは、アルキル化処理による鋭敏な切断特性を示すことが明らかになった。これによりスルホクリック反応を利用した脂肪酸光プローブ作製の簡便化と、切断特性を利用した微量ラベルタンパク質解析効率化が見込める。別途先行して、ビオチン基を有する光反応基をアラキドン酸に導入し作製した光反応性プローブが関連酵素をラベルすることを確認した。以上、初年度の設定目標はほぼ達成した。しかし、先行して行った光ラベル検討ではこのプローブの酵素への結合が遅いことが判明した。最終目的とする代謝産物受容体のプロファイリングには、プローブ構造の再設計を含めた改善が必須と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
作製したビオチンタグを付与したアラキドン酸プローブによる詳細なラベル条件検討を引き続き行う。これと並行して、先のラベル検討の結果をフィードバックし、アラキドン酸-酵素複合体結晶構造を考慮したプローブの再設計を行う。以下の2点「基質-光反応基間リンカー鎖長の変更」と「光反応基構造の軽量化」を推進する。後者の軽量化に関してはタンデムラベル化法を採用し、機能を保持しつつも嵩張る構造を除去した反応基を作製する。この戦略で用いるエチニル基は極めて小さく、光クロスリンク後にクリック反応を利用して選択的にビオチン基を導入できるためラベルタンパク質の検出/濃縮が可能となる。既にこの方法論による実施例は多く報告されている。アラキドン酸代謝酵素を評価系として、その関連タンパク質への親和性、酵素反応性、光ラベルなどを評価し、その結果をプローブ設計にフィードバックする。十分な酵素反応特性が確認され次第、プロテオーム系でのラベル解析に移行する。
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