2016 Fiscal Year Annual Research Report
生体内脂質クオリティ変化としての脂質ラジカル蛍光検出・構造解析
Publicly Offered Research
Project Area | Quality of lipids in biological systems |
Project/Area Number |
16H01363
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山田 健一 九州大学, 薬学研究院, 教授 (60346806)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 脂質 / 薬学 / 分析科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
脂質は容易に酸化され脂質過酸化物を生じる。生成した脂質過酸化物質や代謝産物は、その後、蛋白質などを複合体を形成し炎症反応などを引き起こすことで、様々な疾患に関与することが報告された。そこで、我々はその代謝の基点である「脂質ラジカル」を標的とした検出技術開発を、さらに発展させ、動物実験に最適なプローブを開発し、新たな方法論を提案することを本研究の目的とした。そのため、本年度は、下記2点を研究項目とした。 1) in vivo評価に最適な蛍光プローブの評価・選択 様々な蛍光団と検出部位を組合せ、in vivo検出に適したプローブを開発した。一方、本プローブをマウスに投与し、体内分布等を検討した。その結果、脳、肝臓、腎臓をはじめとする様々な臓器に本プローブが分布することがわかった。また投与後15~20分程度で、分布量が最大となることがわかった。以上の結果より、本プローブは、様々な臓器での疾患モデルに適用できる可能性が示された。 一方、本プローブの特徴のひとつである脂質ラジカルとの共有結合する点を利用し、動物モデルにおいて脂質ラジカルの構造解析ができる可能性が示唆された。 2)疾患モデルでの脂質ラジカル蛍光検出 上記実験結果をもとに、実際にin vivoで脂質ラジカルを検出できるか否か検討した。ニトロソアミン投与ゼブラフィッシュに本プローブを投与したところ、肝臓、および脳部位で蛍光強度が有意に上昇した。また阻害剤投与により蛍光の上昇は軽減された。以上の結果より、本プローブはゼブラフィッシュを用いたin vivoイメージングに成功すると共に、本モデルにおいて脂質ラジカルが生成していることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、in vivo検出可能な蛍光プローブの探索と評価および実際に疾患モデルでの評価を行った。現時点で、提案した研究項目はほぼ順調に進んでおり、次年度以降、実際にいくつかの疾患モデルを用いて評価を進める予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度までに開発する脂質ラジカル検出・解析手法をもとに、以下の項目を重点的に進める。 1)in vivo 評価に最適な蛍光プローブの評価・選択:前年度までに、選択した蛍光プローブを動物実験できるよう大量合成する。 2)疾患モデルでの脂質ラジカル蛍光検出:前年度までに最適化したプローブを用いて、引き続き病態モデルにて、脂質ラジカル生成の時間的、量的変動を解析する。また、肥満の有無により生成する脂質ラジカルの量的変動を明らかにする。 3)結合した脂質ラジカルの構造解析:本研究の特徴のひとつは、脂質ラジカルと共有結合でき、結合した脂質ラジカルが未知物質である点である。そこで、これまで開発してきた技術をさらに発展させ、実際に疾患モデルでの脂質ラジカルの検出が可能か否か検討する。疾患モデルとしては、上記項目で選択したモデルを用いる。 以上、生体内での解析に適した蛍光質量分析マルチプローブを用いて、疾患に至る過程での最もアクティブな分子として脂質ラジカルを捉え、その時間的・量的・質的変動と疾患との関連を明確にすることで本研究を総括する。
|
Research Products
(14 results)