2016 Fiscal Year Annual Research Report
電位依存性チャネルタンパク質の温度センシング機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative understanding of biological phenomena with temperature as a key theme |
Project/Area Number |
16H01389
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤原 祐一郎 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (20532980)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | イオンチャネル |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は酵素反応や免疫システムなどの生体反応に適した37℃の体温を維持している。そして、火や氷雪を「熱い」「冷たい」侵害刺激として回避する。我々の体において温度をセンスする分子がイオンチャネルであると分かったのは最近の話である。本研究は、体温付近の環境で高い温度依存性を呈し、白血球の温度センサーとして知られる電位依存性H+チャネル(Hv)をターゲットとし、電位依存性チャネルタンパク質の温度センシング機構について明らかにすることを目的とする。Hvチャネルに対して、生理学、生物物理学、蛋白質分析化学、蛋白質計算科学の分野横断的な手法を先鋭的に用いて、タンパク質が、物理的な温度を受容し細胞の生物学的機能に変換出力していくメカニズムを解明することを目的とする。生体分子の温度センシング機構の解明に広く応用できる新しい方法論的アプローチの確立をめざす。 本年度は、網羅的に点変異体作成し、二本刺し膜電位固定法により電気生理学的機能解析を行い、温度依存性を決める責任ドメインの探索を行った。その結果、温度依存性が変わるHvチャネル変異体を数種類獲得し、温度依存性の強弱を決める構造基盤について考察した。 Hvチャネルに対して分子動力学的解析を行うためのシステムの構築を行った。温度域値を決めるコイルドコイルドメインの熱安定性を分子動力学的手法にて行った。野生型コイルドコイルに対してシミュレーションを行い、熱に弱い部位を見いだすことに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通りに、温度依存性の責任ドメインの探索を行い、温度依存性が変わるHvチャネル変異体を数種類獲得することに成功した。この結果を活かして次年度詳細な解析に進みたい。コイルドコイルドメインの熱安定性を分子動力学的手法にて解析を行う基盤ができあがり、熱に弱い部位を見いだすことに成功した。このシミュレーション基盤と知見を活かして次年度以降の発展的な解析に進みたい。また、領域内の他の研究者との共同研究をスタートするための打ち合わせを行なったり、「温度生物学」と銘打ったシンポジウムで講演を行い、研究の幅を広げることにも成功した。以上の理由から本研究プロジェクトはおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
分子構成が最も小さい電位依存性チャネルであるHvチャネルの温度特性を解析する。その高い温度依存性を生み出す分子機構を明らかにし、電位依存性チャネルに普遍的に通用する温度センシング機構を解明することを目指し、タンパク質の構造-機能-物性を「温度という共通のパラメター」を基軸として解析を行なう。計算科学を用い理論と実験の両側面からチャネルタンパク質を解析し、各パラメターの有機的なつながりを検討する。 1) 電気生理学解析:前年度同定した温度感受性の変化する変異体をパッチクランプ法を用いて詳細に解析する。 2) 構造機能相関解析:電気生理学的に温度変化に伴い変化するチャネル活性を解析する。Hvチャネルの結晶構造を基に作成した変異体を解析し、二本刺し膜電位固定法により網羅的に解析を行い、温度依存性の責任ドメインを探索する。探索により得られた変異体は随時パッチクランプ法にて詳細な解析を行う。 3) 分子動力学解析:昨年度、解析を行ったコイルドコイルドメインの熱安定性のシミュレーションを発展させ、変異体コイルコイルおよびHvチャネル分子全体に対して温度を変えたシミュレーションを行い、熱安定性とチャネルゲーティングの関係を検討する。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Conductance of P2X4 purinergic receptor is determined by conformational equilibrium in the transmembrane region.2016
Author(s)
Minato Y, Suzuki S, Hara T, Kofuku Y, Kasuya G, Fujiwara Y, Igarashi S, Suzuki EI, Nureki O, Hattori M, Ueda T, Shimada I.
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Journal Title
Proc Natl Acad Sci U S A.
Volume: 113
Pages: 4741-4746
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Crystal structures of the TRIC trimeric intracellular cation channel orthologues.2016
Author(s)
Kasuya G, Hiraizumi M, Maturana AD, Kumazaki K, Fujiwara Y, Liu K, Nakada-Nakura Y, Iwata S, Tsukada K, Komori T, Uemura S, Goto Y, Nakane T, Takemoto M, Kato HE, Yamashita K, Wada M, Ito K, Ishitani R, Hattori M, Nureki O.
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Journal Title
Cell Res.
Volume: 26
Pages: 1288-1301
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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