2016 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidating of molecular mechanism of Piwi-piRNA mediated transcriptional silencing of transposons in Drosophila ovarian somatic cells
Publicly Offered Research
Project Area | Chromosome Orchestration System |
Project/Area Number |
16H01402
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 薫 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (20548507)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | piRNA / Piwi / トランスポゾン / エピゲノム / 染色体 / 転写 / ゲノム / RNAサイレンシング |
Outline of Annual Research Achievements |
piRNAは生殖細胞特異的な小分子RNAであり、PIWIタンパク質と複合体を形成することで、核内外でトランスポゾンの発現抑制を行う。それにより、トランスポゾンの宿主ゲノムへの侵略を防ぎ、生殖細胞ゲノムの品質管理を担う。これまでの解析から、核内でのトランスポゾン発現抑制にはヒストン修飾などのエピジェネティックな制御が介在することが示唆されているが、その分子機構の詳細はまったく明らかになっていない。本研究の目的は、Piwi-piRNA複合体が核内でどのようにしてトランスポゾンの発現を抑制しているのか、その分子作用機序を明らかにすることである。具体的には、ショウジョウバエ卵巣由来培養細胞OSC を用いてPiwi相互作用タンパク質を単離し、Piwi-piRNAが標的とする分子実体を明らかにする。 まず、免疫沈降法を用いた解析からPiwi相互作用タンパク質には、核内piRNA因子であるMaelstrom (Mael)やリンカーヒストンH1、ヌクレオソームが含まれていることを明らかにした。また、Piwi相互作用タンパク質をショットガン質量分析法により解析した結果、転写活性化因子Brahma (Brm)を同定した。BrmとPiwiのRNAi実験から、Brmはトランスポゾンの転写活性化に寄与し、正常細胞ではPiwiによってBrm機能が不活性化されているためトランスポゾンの発現が抑制されていると考えられた。さらに、Maelの機能を抑制すると、PiwiとBrmの相互作用が減少することから、MaelはPiwiとBrmの相互作用を促進し、PiwiによるBrm機能の抑制に寄与することが示唆された。加えて、Maelを抑制するとPiwiと転写活性型ヒストン修飾の相互作用も減少することからも、Brmがトランスポゾンの転写を活性化し、Piwiがその機能を抑制するというモデルを支持する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、Piwiが相互作用しているゲノムDNA、および、ヒストン修飾の解析を進めてきた。ゲノムDNAについては、現在、次世代型シーケンサーを用いた配列の同定と解析を進めている一方、ヒストン修飾については大きな発見があった。我々は、Piwiが様々なヒストン修飾と相互作用していることを明らかにし、中でも活性型ヒストン修飾の含有量が高いことを見出した。さらに、Maelをノックダウンすると、Piwiと活性型ヒストン修飾の相互作用レベルが低下することを明らかにした。これまでのモデルでは、Piwiが標的とするトランスポゾンのゲノム領域は転写抑制型ヒストン修飾であるH3K9me3が多くみられ、PiwiはH3K9me3修飾に寄与すると考えられていたが、我々の結果は、これまで予想されていたモデルとは異なり、Piwiは活性型ヒストン修飾を多く持つゲノム領域のトランスポゾンを標的としていることを示唆する。次いで行ったPiwi相互作用タンパク質の解析から、我々は、Piwiが標的とする分子実体であるBrmを同定することに成功した。現在の我々の作業モデルでは、Piwiが転写活性化因子Brmに相互作用し、その転写活性機能を抑えることで、トランスポゾン発現の活性化を抑制していると考えている。Brmはトランスポゾンの転写活性化に寄与しており、そのゲノム領域は転写活性型ヒストン修飾が多く存在すると考えられる。このモデルは、Piwiが相互作用するヒストンには転写活性型修飾が多いというと結果とも矛盾しない。これらの成果は当初の計画を大きく上回るものであり、引き続き、PiwiによるBrm機能の抑制機構の解明を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の結果から、トランスポゾンの転写はBrmによって活性化されており、さらにPiwiが相互作用することによってその機能が抑制されることで不活性化されていると考えられる。その分子機構を詰めるために、以下の推進方策をとる。1) Brm依存的トランスポゾンの同定と解析 - Brmがどのような機構でトランスポゾンの転写を活性化しているのは不明である。まず、Brmをノックダウン(KD)した細胞におけるトランスポゾンの発現レベルを調べる。さらに、Brmが標的とするトランスポゾンをPiwiの標的トランスポゾンと比較解析する。2)トランスポゾン活性化に必要なBrmの機能ドメインの解明 - BrmはATPaseドメインなどの既知のタンパク質ドメインをいくつかもっており、どのドメインが転写活性に必要なのかを調べる。3) BrmとPiwi、Maelの分子間相互作用の解明 - BrmとPiwi、Maelの相互作用部位についてドメイン欠損変異体を用いて調べる。さらに、それぞれのKDを行い、Brmとの相互作用レベルを調べる。4) Piwi、MaelによるBrm転写複合体形成(抑制)機構の解明 - Brmは転写複合体を形成することで標的遺伝子の転写を促進する。Piwi、MaelがBrm機能をどのように抑制するのかを明らかにするために、それらのKD細胞を用いてBrmと複合体構成タンパク質の相互作用レベルを比較解析する。5) その他の共通タンパク質の機能解明 - PiwiとMaelの核内相互作用タンパク質の機能解析を進める。Brmと同様に、まずKD及びダブルKD実験を行い、Piwi-piRNA経路へ関与する因子を枚挙する。6) Piwi 核内複合体が相互作用するゲノムDNA の配列決定 - Piwiが相互作用するゲノムDNAの配列解析を進める。
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