2016 Fiscal Year Annual Research Report
ストレスによる次世代でのテロメア短縮
Publicly Offered Research
Project Area | Chromosome Orchestration System |
Project/Area Number |
16H01413
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
石井 俊輔 国立研究開発法人理化学研究所, 石井分子遺伝学研究室, 上席研究員 (00124785)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | テロメア / ストレス / 遺伝 / 精子 |
Outline of Annual Research Achievements |
テロメアは染色体末端に位置するTTAGGG(ほ乳類の場合)の反復配列で、染色体末端を保護する役割を持つ。またテロメアの長さは細胞分裂毎に短くなり、老化を測定する時計の役割を果たすと考えられている。一方ヒトの疫学調査結果から、精神ストレスを受けるとテロメアの長さが短くなることが示唆されており、またテロメアの長さが次世代に遺伝することも示唆されている。しかしストレスによるテロメア短縮のメカニズム、テロメアの長さが世代を超えて遺伝するメカニズムは全く分かっていない。 様々な精神ストレスにより抹消組織でTNF-αなどの炎症性サイトカインが誘導されることが知られている。そこで父親マウスに精神ストレスをmimicするTNF-αを投与すると、次世代でのテロメア短縮が観察された。TNF-α投与により精細胞でATF7がリン酸化され、サブテロメア領域のヘテロクロマチン構造が壊れ、TERRA(Telomere repeat-containing RNA)遺伝子の転写が誘導された。TERRAは精子を介して次世代に伝達され、テロメア短縮を誘導した。このように染色体構造の維持に重要なテロメアの長さは、世代を超えて精神ストレスの影響を受けることが明らかにされた。 このように本研究は「ストレスによる世代を超えたテロメア短縮」を研究するものであり、老化などに伴う疾患とも密接に関連し、時間軸に沿った解析を行うことから、「疾患による染色体4D情報の変動の解明」に、寄与するものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の結果が得られ、研究は着実に進展した。 1.父親マウスに精神ストレスをmimicするTNF-αを投与すると、次世代でのテロメア短縮が観察された。 2. TNF-α投与により精細胞でATF7がリン酸化され、サブテロメア領域のヘテロクロマチン構造が壊れ、TERRA(Telomere repeat-containing RNA)遺伝子の転写が誘導されることを明らかにした。 3.精子中にTERRAが含まれることを明らかにした。 4.受精卵にTERRAを注入すると、発生した胚でのテロメア短縮が観察された。
|
Strategy for Future Research Activity |
論文を完成させるためには、TERRAによるテロメア短縮の、いわゆるLoss-of function アッセイを行う必要がある。このためTNF-α投与した父親マウスから得られた受精卵に、TERRAにハイブリダイズしてその機能を抑制する短鎖RNAをインジェクトして、TERRAによるテロメア短縮が抑制されるかどうかを検証する。また論文を投稿した際には様々な疑問点が挙げられることが予想されるので、それらに答えるための実験を行う。
|
Research Products
(8 results)