2016 Fiscal Year Annual Research Report
Development of super-resolution real-time molecular imaging technique in the deep part of the body
Publicly Offered Research
Project Area | Resonance Biology for Innovative Bioimaging |
Project/Area Number |
16H01419
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
船津 高志 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 教授 (00190124)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 1分子計測(SMD) / 画像 / 共焦点顕微鏡 / 生物物理 / ナノバイオ |
Outline of Annual Research Achievements |
1.自発的に明滅する超解像プローブを用いたリアルタイム超解像1分子追跡法の開発 ストレス顆粒の微細構造や生成過程を明らかにするためには、mRNAの局在と運動をナノメートルの精度で決定する必要がある。これを実現するため、蛍光分子の明滅現象を利用した。蛍光標識された分子が高密度で存在すると全体的にぼやけた像となり個々の分子を分離して観察することが出来ない。蛍光の明滅現象を利用することにより、蛍光分子が高密度で存在する条件下でも1分子を観察することが可能である。蛍光色素Cy5, 2MeSiR, HMSiRの物理化学的性質を比較したところ、2MeSiRの明状態と暗状態の比を調整することにより、細胞内1分子追跡が可能であることが示唆された。次に、2MeSiRで標識した2’-O-methyl化poly(U)22をCOS-7細胞にマイクロインジェクションし、poly(A)+ mRNAを蛍光標識し、これを斜光照明にて観察した。その結果、細胞内で1分子のmRNAの運動を数十ナノメートルの精度で追跡できることが明らかになった。 2.補償光学系を用いた生体深部の超解像観察法の開発 生体深部で1分子の蛍光を可視化するためには、対物レンズの収差や生体組織の屈折率分布に起因するボケの補正を行う必要がある。このために可変形鏡による補償光学系を顕微鏡システムに組み込んだ。2枚のリレーレンズにより、物体の像を後方の高感度カメラに送り、その中間に生じる瞳の像が可変形鏡の大きさになるように調整した。また、途中にダイクロイックを起き、ガイド星の蛍光を波面センサーに導いた。波面センサーの感度不足が懸念されたので、ガイド星の数を増やすことにした。このために、照射系に反射型液晶マイクロデバイスによる空間光位相変調器を組み込んだ。これにより、10 X 10個の収束したレーザービームを試料面に生成し、感度不足を補った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.自発的に明滅する超解像プローブを用いたリアルタイム超解像1分子追跡法の開発 蛍光分子が高密度で存在する条件下でも1分子を観察するために、蛍光の明滅現象を利用することにした。蛍光色素Cy5, 2MeSiR, HMSiRの物理化学的性質を比較したところ、2MeSiRの明状態と暗状態の比を調整することにより、細胞内1分子追跡が可能であることが示唆された。次に、2MeSiRで標識した2’-O-methyl化poly(U)22をCOS-7細胞にマイクロインジェクションし、poly(A)+ mRNAを蛍光標識し、これを斜光照明にて観察した。その結果、細胞内で1分子のmRNAの運動を数十ナノメートルの精度で追跡できることが明らかになった。このように、本研究の技術的な基盤を確立することができた。 2.補償光学系を用いた生体深部の超解像観察法の開発 顕微鏡システムの結像系と照射系の両方に補償光学系を組み込んだ。結像系には、可変形鏡による補償光学系を組み込んだ。この系で使用する波面センサーの感度不足を補うために、ガイド星の数を増やすことにした。このために、照射系に反射型液晶マイクロデバイスによる空間光位相変調器を組み込んだ。これにより、10 X 10個の収束したレーザービームを試料面に生成した。以上の取り組みにより、本研究の技術的基盤を確立することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.自発的に明滅する超解像プローブを用いたリアルタイム超解像1分子追跡法の開発 細胞がストレス環境下におかれると、mRNAが凝集してストレス顆粒と呼ばれる構造体を形成し、タンパク質の合成が抑制されることが知られている。しかし、ストレス顆粒の微細構造や生成過程は明らかでない。超解像イメージング法を駆使して、これを明らかにする。まず、自発的に明滅する蛍光色素(2MeSiR)でmRNAを蛍光標識する。次に、細胞の温度を空間的、時間的に厳密に制御しながら赤外レーザーを用いて加熱し、細胞に対するダメージの少ないヒートショックをかける。これによりストレス顆粒の形成、崩壊過程を超解像観察により明らかにする。また、ストレス顆粒内にはmRNAの高密度領域が存在することが知られているので、この構造とmRNAの運動の関係を明らかにする。 2.補償光学系を用いた生体深部の超解像観察法の開発 生体の屈折率分布を模したモデル試料を用いて補償光学系の評価を行い改良する。最終的には、研究項目1に記載したRNAのイメージングで開発した技術と統合し、実試料として、線虫(Caenorhabditis elegans)の生殖腺、卵母細胞、胚内におけるmRNAおよびRNA顆粒の超解像観察を行う。線虫は多細胞生物の優れたモデル系であり、全細胞系譜、全神経回路が記述され、膨大な遺伝解析の蓄積があるという利点がある。線虫内の上記の組織内で、特定のmRNAがどのような運動をするか、集合してどのような微細構造を形成するか超解像観察する。そして、発生過程において母性mRNA の翻訳制御がどのように行われているかを明らかし、発生過程における遺伝子発現の分子メカニズムを解明する。
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