2016 Fiscal Year Annual Research Report
SHG専用色素を用いたマルチモダル2光子顕微鏡の開発と応用
Publicly Offered Research
Project Area | Resonance Biology for Innovative Bioimaging |
Project/Area Number |
16H01434
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
塗谷 睦生 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (60453544)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 光第二高調波発生 / SHG / 2光子顕微鏡 / マルチモダル / 多光子顕微鏡 / グリア細胞 / アストロサイト |
Outline of Annual Research Achievements |
光第二高調波発生(Second Harmonic Generation: SHG)は蛍光とは異なる2光子現象であり、その可視化により独自の情報の獲得が可能となる。しかし、ライフサイエンスの分野においては応用の試みが十分になされてこなかった。このような現状を打開しSHGイメージングのバイオイメージングにおける有用性を探求すべく、他の多光子現象との同時観測によるマルチモダル2光子顕微鏡観測を可能とするSHG専用色素の開発と応用を行った。 これまでの解析から、我々が開発した無蛍光性SHG専用色素Ap3を用いることにより、2光子励起蛍光とSHGを同時かつ独立に可視化する、マルチモダル多光子顕微鏡観測が可能となることが確かめられた。Ap3は細胞膜に高い親和性を示し、また脂質二重膜を通過しないことから、形質膜の片側で中心対称性を崩して存在し、強いSHGシグナルを発する。蛍光色素と異なり小胞などの小さな構造体からはシグナルが発生せず、よって形質膜のみを選択的に可視化することが可能であることが明らかとなった。この性質を利用し種々の蛍光プローブと併せて観測することにより細胞内でも特殊な性質を持つとされる形質膜直下における生命現象の解明に大きな力を発揮することが期待された。 上記のマルチモダル多光子顕微鏡観測系の確立と並行し、その解析対象として非常に有望な脳のグリア細胞であるアストロサイトの生理学的性質に関する基礎的な解析を行った。ここから、「神経調節物質」とされるノルアドレナリンがアストロサイトの刺激応答性を制御していることが明らかとなった。同時にアストロサイトは非常に複雑な細胞形態を持ち、細胞内コンパートメントを持つことが知られていることから、高い時空間分解能を持つマルチモダル多光子顕微鏡の応用により、これまで知られることの無かったアストロサイトの生理機能の解明が大きく進むことが期待された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ計画通り研究を遂行することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は昨年度の研究を踏まえ、マルチモダル2光子顕微鏡観測系の特長を活かした細胞生物学的研究を行う。 昨年度の研究から、SHG専用色素を用いたマルチモダル2光子顕微鏡観測の系が確立し、その基礎的な特徴が明らかとなった。まず、SHG専用色素を用いた細胞膜のSHGイメージングは他の2光子現象のイメージング、特に蛍光色素の2光子励起イメージングと競合せず、それらの同時イメージングによるマルチモダル2光子顕微鏡観測が可能であることが分かった。更に、このSHG専用色素からのSHGシグナルは幅広い波長域の入射光で観測されるものであることから、最適波長の異なる種々の蛍光色素との併用が可能であることが明らかとなった。また、脳のグリア細胞であるアストロサイトの生理学的性質を2光子励起顕微鏡で解析することにより、その非常に動的な性質が明らかとなり、マルチモダル2光子顕微鏡を用いた解析の応用対象として非常に有望なものであることが明らかとなった。 本年度はこのようなSHG専用色素を用いたマルチモダル2光子顕微鏡の特長を活かし、細胞膜のSHGイメージングに種々の細胞内構造の2光子蛍光イメージングを併せ、細胞膜近傍における生命現象の細胞生物学的な解析を試みる。特に細胞骨格や小胞の動きなどに着目し、これまで定量的な知見を得ることが困難であった細胞膜直下におけるこれらの時空間的な挙動の解明を試みる。細胞内においても特殊な空間とされる細胞膜近傍における生命現象の解明をマルチモダル2光子顕微鏡の特長を活かすことで試み、細胞生物学に新たな知見をもたらすと共にバイオイメージング領域におけるマルチモダル2光子顕微鏡の更なる展開を試みる。
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