2016 Fiscal Year Annual Research Report
深部と超解像イメージングに向けた次世代色収差補正
Publicly Offered Research
Project Area | Resonance Biology for Innovative Bioimaging |
Project/Area Number |
16H01440
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
松田 厚志 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所フロンティア創造総合研究室, 主任研究員 (20585723)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | バイオイメージング / 色収差 / 超解像顕微鏡 / 画像処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、新しい高精度の色収差補正技術の開発を行う。生物学者に最も必要な分解能は空間分解能に加えて、色収差補正の精度であるが、観察する試料ごとに色収差は様々であり、事前にその量を正確に知ることは不可能である。深部化、高分解能化する近未来の顕微鏡観察では、上述の位置ずれ量は無視できない。この問題を解決するため、申請者の開発した観察試料自身の色収差を計測できる画像取得法と収差補正ソフトウェアの精度を高めることが、本研究の目的である。 本年度は、画像相関を応用し、画像の領域ごとに色収差を補正できる計算方法を開発し、顕微鏡画像に適用した。その結果、これまで3次元で15nm程度だった補正能力を10nmにまで向上することに成功した。したがって、高精度の色収差補正には、試料や顕微鏡自身の小さな歪みを補正することが必須であることが示された。 一方、3次元の補正能力のうち、光軸方向の補正能力が最も低く、10nm程度にとどまっている。この原因は、点像分布関数(PSF)の形状にある。光の波長ごとに屈折率が異なるため、同一条件で観察すると、PSFの深さ(Z)方向の非対称性が波長ごとに異なってしまう。試料の球面収差を波長毎に補正すれば、異なる色のPSFの位置と形状を修正し、全ての波長でZ方向に対象なPSFを得ることができる。これを実現するため、波面センサーと可変形鏡からなる補償光学顕微鏡を作成し、PSF形状の改善による色収差補正能力の向上の実証に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、画像相関を応用した方法を発展させることにより、色収差補正の精度を大きく向上することに成功した。本研究のように蛍光ビーズを必要とせず、どのような生物画像でも領域ごとに色収差を補正できる方法はこれまでに例がなく、この分野において大きな進歩である。さらに、PSFの形状を補正するために、チャネルごとの球面収差をも補正する試みは、この分野では初めてである。本研究では、実際に波面補正系を立ち上げ、実験の準備を進めている。一方、初年度の実績ではこの顕微鏡に多色観察の機能が無く、一色の観察に限られていたために、現状では本研究の目的を達成できていない。したがって、全体的には極めて順調に進展しているが、今後、顕微鏡の多色化の開発を行う必要がある事を考慮して、「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、上記の研究をさらに進めるとともに、蛍光フィルターの持つ波長の幅の内部の色収差にも対応できるように、10nmの分解能の分光による色収差を計測し、得られた結果から、その補正方法を検討する。また、色収差補正ができれば、異なる色で標識された観察対象の位置関係を、顕微鏡の分解能を超えて計測できると予想される。これを実証するため、核膜孔複合体の核膜内膜側と外膜側にあるタンパク質の局在の判定を行う。以上の研究から、色収差補正の精度の向上と、その応用実証を行う。
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Research Products
(13 results)