2016 Fiscal Year Annual Research Report
細胞作用の繰り返しで自律的に3次元形態を構築するカイメン骨片骨格形成
Publicly Offered Research
Project Area | Discovery of the logic that establishes the 3D structure of organisms |
Project/Area Number |
16H01445
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
船山 典子 京都大学, 理学研究科, 准教授 (30276175)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 自己組織化 / 骨格形成 / カイメン / 形態形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
カイメンの最も外側の上皮を蛍光染色し、ezDSLMにより10時間以上撮影したタイムラプス画像データからの上皮3次元形状の抽出法を探った。a) 計画班の井上康博博士と相談、画像解析ソフトウエアを用いたカイメン上皮のxyz座標の抽出及び上皮構造の3次元再構築を試みた。技術習得は出来たもの、しかし上皮細胞の輝度が一様でないため自動抽出は出来ず、試みとして手動で大まかに14000点の座標を取り試行の末2つのタイムポイントでの再構築データを得た。しかし蛍光像のコンフォーカリティーが足りないこと等から再構築した像に段差が出来る、12万枚以上の画像から全て手作業で詳細なxyz座標のデータを抽出することは現実的でない等問題が大きいと分かった。b) そこで、基礎生物学研究所の先端バイオイメージング支援に申請、加藤輝博士と藤森俊彦博士の支援により上皮の位置情報の抽出法を検討、細胞内での蛍光強度の不均一性による問題を解決する為の予測計算を含む抽出法を様々に検討した。課題が多く今のところ成功には至っていない。一方、骨片骨格形成の数理モデル構築を目指し、計画班の秋山正和博士の研究室に大学院生を派遣、数理モデル構築の基礎を教えていただいたこと、阻害剤用い基底上皮の一部が退縮する傾向を示すカイメンでの骨片運搬の詳細について解析が進んだことと成果が得られている。後者に関し、基礎生物学研究所の野中茂紀博士、谷本篤史博士との共同研究でezDSLMによる詳細なタイムラプス撮影を行い、基底上皮上を体の外方向へ運搬されていた骨片が、体の退縮部分では内側へと運搬方向を変え、その際確率的にENCMに運搬する上皮を乗り換えること、その場合高い確率で骨片が上皮に刺さり、結果的に体の内側に骨片が建てられる様子の詳細を捉えた。これはENCMの3次元形状によるものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
挑戦的な課題である1)カイメン上皮の3次元構造の変化をライブイメージング画像からXYZ座標として抽出、コンピューター上で4次元的に再構築する、及び2)カイメン骨片骨格形成の数理モデルの構築に関しては、まだ試行錯誤の状態である。しかし、試行錯誤により研究グループとして数理モデル構築と実際とのすり合わせに関しての知識が得られ、新規の技術を習得出来たこと、また数理モデルで表現するための問題点が明確になったことなど、今後の研究の展開にプラスとなる成果が得られている。例えば1)に関しては、上皮細胞が非常に扁平で厚みがないことから、CM-DiIによる染色が核の周囲のERなどで強いなど均一でないこと、12時間以上の撮影を必要とするため、撮影中に新たに幹細胞から分化し加わる上皮細胞は染色されていない、倒立顕微鏡ベースのezDSLMの画像であり焦点面が厚いことなどが画像からの上皮組織形状抽出を困難にさせていることが分かった。専門の研究者と相談し試行したが、シグナルとしての穴を埋めると、新たに建てられた骨片によりテントの様に貼り出した上皮形状が潰れてしまい、さらなる試行錯誤が必要である。2)に関しては、共同研究で試行錯誤し、私達が想像していたよりも3次元(4次元)でのシミュレーションが難しいこと、どこまでは出来そうかが具体的に分かった。3)体の1部の退縮に伴う骨片運搬とその刺さる位置については、光シート型顕微鏡ezDSLMでの撮影を複数回行い、注目する現象の頻度が低い、12時間以上の撮影が必要であるなどの問題から例数は未だ多くはないものの詳細な過程を捉える事に成功した。当研究グループのもつ倒立顕微鏡を用いた撮影・解析と合わせ、現象の理解は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
1)引き続き多角的に取り組む。また、芽球の殻の変わりにビーズを移植するなど、カイメンの上皮の3次元形状を人工的に変化させる実験系を工夫、骨片が刺さる位置について比較、解析を進める。
2)骨片骨格形成全体の数理モデル構築だけでなく、例えば複数の細胞による骨片運搬など、骨片骨格形成過程の1つの事象に着目した数理モデル構築を目指す。
3)得られた撮影画像と骨片運搬の軌跡の解析を行い、再現性の再確認などこれまでの研究内容を詰め、論文としてまとめ、投稿することを目指す。
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