2016 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of the logic that a puffer constructs "mystery circle"
Publicly Offered Research
Project Area | Discovery of the logic that establishes the 3D structure of organisms |
Project/Area Number |
16H01455
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Research Institution | Natural History Museum and Institute, Chiba |
Principal Investigator |
川瀬 裕司 千葉県立中央博物館, その他部局等, 研究員(移行) (10270620)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 立体構造 / バイオミメティクス / フグ目魚類 / 行動生態 / 配偶者選択 |
Outline of Annual Research Achievements |
アマミホシゾラフグは全長約10cmの小型のフグで,オスは繁殖のために放射状に並ぶ山と谷および中央部の産卵床から成る直径約2mもの「ミステリーサークル」を砂底につくることが知られている。本研究では,フグが自分の体長の20倍もある精巧な3D構造物をいかにしてつくるのか,そのロジックを行動観察と実験・理論を融合したアプローチにより解明を行ってきた。 2016年6月に奄美大島南部の沿岸域でSCUBA潜水を行い,最初期のミステリーサークルの探索とフグの行動観察,ミステリーサークルの砂採集,ミステリーサークルの撮影,フグの定点動画撮影を行った。 フグの行動観察によると,ミステリーサークルをつくり始める際いきなり谷を掘り進めるのではなく,まず体を様々な角度から海底に押し当ててくぼみをつくることが今回初めて明らかになった。この発見により,ミステリーサークル外側に形成される放射状構造の形成シミュレーションでは,フグが外側から窪みのエリアを目指して掘り進めること,定点動画の行動解析によりある半径以内のランダムな地点から谷掘りを繰り返すことなどを条件設定すると,実物と類似した放射状構造の出来上がることが確認された。ミステリーサークル各部位の砂をレーザー光による粒度分析を行ったところ,中央部には粒度の細かい砂(50~300μm)が徐々に堆積して産卵後すぐに荒い砂に戻ること,粒度組成の異なる底質の場所でも中央部に堆積する砂の粒度は類似していることが明らかとなった。フグが中央部へ砂を飛ばすときと同じ速さに設定したスクリューを用いて現地で採集した砂を飛ばす実験を行ったところ,野外と同様な粒度の砂が堆積することが確認された。また,4Kビデオカメラにより様々な角度からミステリーサークルを撮影した動画コマ(静止画)により,3D構造を初めて定量的に復元することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の成否はフィールド観察の出来具合に大きく左右されるが,2016年度は約3週間の調査期間中海況が比較的安定して毎日SCUBA潜水を行うことができたことから,当初の予定以上に潜水観察を行うことができ,解析に必要なサンプルやデータを十分に得ることができた。フグの産卵前日に中央部に形成される放射状の模様形成シミュレーションは2017年度に行う予定であったが,十分な動画を撮影することができたため前倒しで行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのところほぼ当初の計画通り研究が進んでいるが,実際に実験・解析を行ってみると,手法を修正の上さらにデータを採取したほうがよい点が浮き彫りになった。 静止画によるミステリーサークルの3D構造復元は2016年度の調査で概ね成功したが,指標となるマーカーとして1本の定規で行ったため若干精度に問題が生じた。そこで2017年度の調査では,複数のマーカーを海底に固定して継時的に撮影を繰り返し,ミステリーサークル各部位の変化の様子を定量的に明らかにする。 フグがミステリーサークルの中央部へ砂を飛ばすときと同じ速さに設定したスクリューを用いて現地で採集した砂を飛ばす実験を行ったところ,野外と同様な粒度の砂が堆積することが確認された。一方,粒度が荒めの全く別の場所の砂で実験を行ったところ,ほとんど砂が飛ばず堆積しなかった。このことからミステリーサークルの形成には,想定していた以上に海底の砂の粒度組成が重要な意味を持っているらしいことが明らかになった。このため,粒度(砂の飛ばされやすさ)をファクターに取り入れたシミュレーションを行い,砂底の粒度によりミステリーサークルの形状がどのように変化しうるのか明らかにする。
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