2016 Fiscal Year Annual Research Report
環境変化によるイネ芒形質可塑性の分子メカニズムの解明
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative system of autonomous environmental signal recognition and memorization for plant plasticity |
Project/Area Number |
16H01464
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
芦苅 基行 名古屋大学, 生物機能開発利用研究センター, 教授 (80324383)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | イネ |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、栽培イネの染色体背景に野生種及び近縁種の染色体断片を置換した複数の系統群(染色体断片部分置換系統群CSSLs: Chromosome Segment Substitution Lines)を用いて、芒の有無と遺伝子型を比較し、12本ある染色体のうち、第4、第8染色体の2つに芒形成の遺伝子があることを見いだしました。それぞれ、Regulator of Awn Elongation 1 (RAE1) 、RAE2と命名し、今回、RAE2遺伝子(Os08g0485500)を突き止めることに成功しました。芒のある野生イネのRAE2遺伝子を栽培イネの1つであり芒の無い日本晴に導入したところ、芒が形成されました。また芒のある系統でRAE2遺伝子の発現を抑制すると芒の長さが短くなりました。 遺伝子配列検索の結果、RAE2はEPFL1とよばれる分泌型ペプチドの一つであることが明らかになりました。分泌型ペプチドとは、N 末端側に存在する分泌型シグナル配列をもち、小胞体やゴルジ体を経由して細胞外へ分泌される比較的短いペプチドのことを指します。この中には、様々な翻訳後修飾やプロテアーゼによる切断を受けて10アミノ酸程度となってから分泌されるものと(短鎖翻訳後修飾ペプチド)、分子内ジスルフィド結合の形成を経て比較的長鎖のまま分泌されるもの(システインリッチペプチド(CRP))の二種類に大別することができます。このうちRAE2は、システインリッチペプチド(CRP)に属していました。野生イネではRAE2が正常に機能していますが、栽培イネでは、このRAE2遺伝子に突然変異が入り、機能が喪失していました。今回、分泌型ペプチドRAE2がイネの芒形成に関与していることが明らかになりました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画通りにイネ芒形成遺伝子の同定に成功し、その分子機構について明らかにするとともに、論文発表(Uehara et al.2016 PANS)に行うなど、研究は当初の計画と通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
芒形成遺伝子RAE2は分泌性ペプチドをコードすることを明らかにしてきたが、 受容体の存在が予想された。これまで、レセプターカイネース型レセプターをイネゲノムから選抜するとともに、イネの穂で発現する6つのRAE2レセプター候補を見いだしている。そこで、これらの遺伝子1つづつクローニングし、RAE2と相互作用するか検証し、RAE2レセプターの同定を行う。 また、無芒の栽培品種であっても、環境条件によって芒の形成が見られることが知られている。これまでの、予備実験で低温環境で一般的に芒を形成しない品種でも、芒を形成する現象を見いだした。温度における、RAE1, RAE2遺伝子の発現を調査し、芒形成の可塑性の分子メカニズムを明らかにする。また、イネの芒形成に関与する遺伝子座を網羅的に同定するために、イネ野生種の染色体置換系統群を観察することによって、イネ野生種が保持する芒形成遺伝子の座乗領域を特定し、遺伝子の同定を進めていく。
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Research Products
(6 results)
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[Presentation] Variation in cysteine residue number in REGULATOR OF AWN ELONGATION 2, a novel EPFL gene, leads to awnlessness in rice.2016
Author(s)
Bessho- Uehara K. *, Wang D. R, Furuta T. **, Minami A., Nagai K, Gamuyao R., Asano K. **, Shim R. **, Shimizu Y**, Ayano M., Komeda N., Doi K., Miura K. **, Greenberg A., Wu J. Z., Yasui H., Yoshimura A., Mori H., McCouch S. R., Ashikari M.
Organizer
Latest Advances in Plant Development & Environmental Response
Place of Presentation
兵庫
Year and Date
2016-11-29 – 2016-12-02
Int'l Joint Research
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[Presentation] 芒形成原因遺伝子RAE2の同定により明らかとなったアジアとアフリカにおけるイネ栽培化の歴史2016
Author(s)
別所-上原奏子, Diane R. Wang, 古田智敬, 南杏鶴, 永井 啓祐, 浅野賢治, 三浦 孝太郎, 清水義弘, 綾野まどか, 土井一行, 米田典夫,Greenberg Anthony, 安井秀, 吉村淳, 呉健忠, Susan R. McCouch, 芦苅 基行
Organizer
日本育種学会 第130回講演会
Place of Presentation
鳥取
Year and Date
2016-09-24 – 2016-09-25
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