2016 Fiscal Year Annual Research Report
Memory and transition system for defense responses via plant-plant communications
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative system of autonomous environmental signal recognition and memorization for plant plasticity |
Project/Area Number |
16H01471
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
有村 源一郎 東京理科大学, 基礎工学部生物工学科, 准教授 (60505329)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 植物間コミュニケーション / ミント / ダイズ / 香気成分(香り) / 防御応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
害虫に食害された植物は、害虫の天敵を誘引するために揮発性化合物(香り、匂い)を大気中に放出する。近くの健全な植物はこれらの匂いを「立ち聞き」することで、害虫に食害される前に防御能力を高めることができる。さらに、香りを受容した植物では香りは刺激として記憶(プライミング)する能力をもつが、これらの詳細な分子機構については明らかにされていない。本研究では、多岐にわたる生物間相互作用活性をもつミントの香り等をモデルケースとし、植物間コミュニケーションにおける防御応答の記憶制御メカニズムの全貌を明らかにする。 本研究では、害虫忌避等のコンパニオン植物として注目されるミントの香りに注目し、植物間コミュニケーション能力が高く、周囲の植物の防御活性を向上させるミント種の同定を試みた。さまざまなミント種の近傍で生育したダイズにおける防御遺伝子の発現解析を行ったところ、12種の中でも特にキャンディーミントの香りには受容植物の防御遺伝子の発現を誘導する能力が備わることが示された。これらの防御活性の誘導はミントの香りに曝してから数日間維持されたが、これらの分子機構には、防御遺伝子のプロモーター領域周辺のクロマチン構造のアセチル化が深く関わることが推定される。 さらに、野外圃場でキャンディーミントの近傍でダイズを生育した場合、害虫による被害率は有意に低下した。ミントの香りには害虫を忌避する効果も含まれることから、プレ処理として温室内でミントの香りを受容させたダイズを野外圃場に移して被害率をモニターしたが、その場合においても香りを受容していないダイズに比べ、被害率は低下した。つまり、ミントの香りには害虫忌避性に加え、周囲のダイズ植物の潜在的な防御力を向上させるコンパニオン植物として機能することが明示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね、計画どおり進行している。香りの記憶の分子機構の解明においては、若干の遅れが認められているものの、今年度前半には当該解析も完了する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
温室内でミント近傍、50 cm、100 cm、200 cmの距離で予め栽培したダイズ植物を圃場に移し、栽培期間(2週間)における被食量の評価および被食害虫の特定を試みる。また、ダイズの被食抵抗性を高める生理活性を持つ香り成分の特定を試みる。 さらに、アブラナ科であるシロイヌナズナのヒストン修飾変異体を用いて、ミントの香りの受容植物における防御応答およびプライミング分子機構の解明を試みる。ゲノム網羅的なChIPシークエンス解析を実施する予定である。
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Research Products
(10 results)