2016 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト生活史の背景文脈を構成する匂いが過去の時間解釈を書き換える-その脳基盤の解明
Publicly Offered Research
Project Area | The Science of Mental Time: investigation into the past, present, and future |
Project/Area Number |
16H01494
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
阿部 十也 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (60588515)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 匂い / 文脈 / エピソード記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト生活史において、匂い自体がエピソードの主役であることは多くないが、匂いと結びついエピソードは多いかもしれない。例えば、2年前にピクニックで嗅いだ花の匂い。4年前に付き合っていた彼女の香水の匂い。などである。これら過去のエピソードはこころの中で時間の前後関係をもって記憶されている。想起する際に、その過去の匂いに暴露された場合、その前後関係は修飾されるのかわかっていない。
我々は、行動実験で過去の匂いに暴露された条件下で想起すると、時間の前後関係に関して錯覚を起こすことが分かった。この錯覚効果を起こす脳部位を同定するためにMRI脳機能画像法を用いて調べた。まず、過去の匂いに暴露されず、錯覚を起こさず時間の前後関係を知覚する脳部位を求めた。既報に一致して海馬傍回、側頭葉、角回などが関与していると考えた。これを時間順序回路と名づけた。
過去の匂いで時間順序に錯覚を起こす場合、海馬、後部帯状皮質などが活性化していることが分かった。これら活性化部位が角回と強く機能連関を持つことが分かった。一方で、角回は時間順序回路との結びつきが弱くなった。以上から、過去の匂いが海馬、後部帯状皮質を活性化させ、時間順序回路の作動を妨害する。割り込んで角回と結びつくことで錯覚を起こさせるのではないかと考えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
匂いによる過去の時間順序の錯覚効果と関係のある脳部位を同定することができた。 データをさらに詳細に解析して論文で発表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現段階の成果を論文で発表する。この結果をもとに新しい問いが生まれた。さらに新しい研究に発展させる。
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Research Products
(5 results)