2016 Fiscal Year Annual Research Report
赤ちゃんに「明日」はあるか? 乳児期のメンタル・タイムトラベルの発達研究
Publicly Offered Research
Project Area | The Science of Mental Time: investigation into the past, present, and future |
Project/Area Number |
16H01509
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中野 珠実 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (90589201)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 記憶の発達 / 視線行動 / 乳幼児 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで、エピソード記憶は、生後数年してようやく成立すると考えられてきた。しかし、エピソード記憶は乳児期から漸進的に発達するが、記憶の再生に用いる言語や行動課題が不適切で、乳児期のエピソード記憶の発達が低く見積もられてきた可能性が考えられる。最近、過去に1度だけ見た出来事に対する予測的な視線行動を調べることで、言語を持たない霊長類にも「いつ・どこで・なに」に関するエピソード記憶があることを、連携研究者の狩野と平田が明らかにした(Kano&Hirata,2015Curr.Biol.)。そこで、本研究では、この霊長類を対象に開発された予測的注視法を、これまでエピソード記憶がないとされてきた2歳未満の乳幼児に適用することで、生後いつ頃からエピソード記憶が成立するのかをまず調べた。本年度は、6か月児・12か月児・18か月児・24か月児を対象に、どこでイベントが生じたかの場所情報を24時間記憶し、それに基づき予測的な視線行動をとれるかを赤外光カメラを用いて調べた。すると、6か月・12か月児は2回目に映像をみたときに、全く予測的な視線行動をとらなかったのに対し、18か月児と24か月児は、出来事が生じるかなり前からその場所を注視する行動が見られた。さらに、使ったものに対しても、予測的な視線行動が生じるかを、12か月・18か月・24か月児を対象に研究を行った。その結果、18か月以降から予測的な視線行動をとることが明らかとなった。これらの研究から、過去に1度だけ体験した出来事は、生後18か月頃から24時間以上記憶していられることが示された。一連の研究を論文にまとめ、国際専門誌に掲載するに至った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
乳幼児期のいつ頃から1回だけ生じた出来事の記憶を24時間以上保持できるかを調べるために、生後6か月~24か月の乳幼児を総勢160名リクルートし、2日間連続して参加してもらう実験を行った。その結果、18か月から出来事の記憶を24時間以上保持できることを同定することができたことから、当初の計画通り進捗している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまで明らかにしてきた過去の1回だけの出来事の記憶を乳幼児はどのくらい長期間保持できるのか、を調べる。また、乳幼児の未来の出来事を想像する能力については、これまで殆ど知見がない。そこで、未来の出来事に対する展望記憶も過去の記憶と同時期に発達するかを調べていく予定である。
|