2016 Fiscal Year Annual Research Report
時間の実験美学:美と魅力の意識化過程と周期的脳波の半球間非対称性の検証
Publicly Offered Research
Project Area | The Science of Mental Time: investigation into the past, present, and future |
Project/Area Number |
16H01515
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
川畑 秀明 慶應義塾大学, 文学部(三田), 准教授 (70347079)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 実験美学 / 意識 / 時間特性 / 潜在・顕在 / 魅力 / 美 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,美や魅力による視覚的意識化の時間特性について,潜在性/顕在性を手がかりに明らにすることを目的としている。平成28年度は,連続フラッシュ抑制(CFS)課題を用いて非優位眼に顔刺激画像を提示し(優位眼には連続フラッシュ刺激を提示),顔刺激に感じられる魅力の程度が顔刺激の顕在的意識化までの時間にどのように反映されるか,どの程度の時間顕在的意識に止まっているかを指標として,潜在的処理から顕在的処理へと至る過程を,様々な要因・パラメタ操作した心理物理実験による検討と,脳内過程として情報処理過程を明らかにするための脳波計測により検討を行った。心理物理実験から,顔の形態的特徴に基づく魅力はCFS条件下でも弁別され,顔魅力が無自覚的に評価されること,特に魅力の程度が高い顔が視覚的意識にのぼりやすいことが明らかになった。また,脳波計測では,事象関連電位(ERP)やスペクトル成分分析に基づいた分析を行った。本研究ではCFSにより顔画像が意識にのぼる前に刺激の提示を停止し,主観的には顔そのものが見えない条件と,意識にのぼる条件とで脳波を比較することで検討を行った。その結果,抑制により例え顔知覚が意識的にできない状態にあっても,魅力顔に対して刺激提示後200-300付近に後頭側頭領域の陰性脳波成分(EPN)の振幅が増大することが明らかになった。また現在,スペクトル成分分析については分析を進めている段階にあり,美や魅力に関連してα波・θ波の前頭葉左右非対称性が得られるかを検討している。本研究の平成28年度の成果は現在,英語により国際論文誌に論文投稿するべく準備している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
顔魅力の意識化過程について,心理物理計測と脳波計測による実験を通して検討し,その進捗は概ね順調に進展していると考えられる。また同時に,顔魅力評価の時間と空間との相互作用や,絵画鑑賞における連続試行の鑑賞時間の減衰現象等,本研究の目的を達成するべく多様な研究についても進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は,平成28年度の脳波研究のスペクトル分析を早急に進め,英語論文としてまとめる。また,CFS課題を応用して潜在プライミング課題を構成し,顔が見え始める前に刺激提示を終えることで閾下(潜在意識下)で顔刺激を提示し,その魅力の程度が,後続して顕在的に提示される物体の選好評価に与える影響を調べる。また,脳波研究のスペクトル分析で前頭葉におけるα波等の半球非対称性が魅力知覚に関連していることが明らかになった場合には経頭蓋交流刺激(tACS)でα波帯域に相当する10Hzの周期電気誘導することで美や魅力の評価が変化するかを調べる。α波等の半球非対称性が確認できなければ,ERPで美や魅力の処理に対応する脳領域を経頭蓋直流刺激(tDCS)で刺激して評価値の変動を確かめる。絵画や顔などを観察している時に感じる美や魅力と,その意識化や評価過程に関する時間特性を実験美学的方法で確かめ,「時間の実験美学」を構築しうる研究を行う。
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Research Products
(20 results)