2016 Fiscal Year Annual Research Report
Neuropsychology of time perception
Publicly Offered Research
Project Area | The Science of Mental Time: investigation into the past, present, and future |
Project/Area Number |
16H01517
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
緑川 晶 中央大学, 文学部, 教授 (90421833)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 主観的現在 / 年齢認識 / 見当識障害 / 第三脳室 / 自伝的記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
時間に関する見当識障害を示した症例の症候について後方視的に詳細な分析を行い、年齢認識に関するモデルを構築した。検討した症例は以下の3例である。1例目は第三脳室に腫瘍を認めた症例である。術前の評価では、知的機能および見当識は保たれていたが、軽度の記憶障害を認めた。術中は、自身や家族の年齢については正しく回答することが可能であったが、ほぼ一貫して10年ほど前の年で答え続けていた。2例目は右前大脳動脈瘤の術後に健忘を認めたが、その後に健忘は改善し日常生活も自立していた。しかし時間の見当識障害は持続したが年齢については正確に答えることが可能であった。3例目は第三脳室に腫瘍を認めた症例である。術前の評価では、知的機能は保たれていたが、記憶障害と見当識障害を認めた。見当識障害は著明で、日付・場所ともに回答できなかった。術中は年齢を回答することができず、およそ50歳若く答えることもあった。第三脳室の腫瘍では健忘の他に見当識障害や作話が生じることは古くから報告されてきたが、これらの症例のように、時間の見当識障害や年齢認識にも関与している可能性が示された。また、現在を適切に認識することが年齢の認識や自伝的記憶にとっての必要条件と思われた。これらの結果より、自身の年齢の認識が自伝的記憶の中核となるとともに、年齢の認識そのものが時間や場所への正確な定位(見当識)や、適切な内的状態の評価など複数の情報にもとづいて成立していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験的手法を行うための協力施設における倫理審査委員会の審査に時間を要し、実験的研究を開始が遅れたため。
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Strategy for Future Research Activity |
実験的手法による主観的現在についての研究を推進する。
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