2016 Fiscal Year Annual Research Report
過去の学習記憶を未来の適応行動に活かす神経機構
Publicly Offered Research
Project Area | The Science of Mental Time: investigation into the past, present, and future |
Project/Area Number |
16H01518
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小川 正晃 京都大学, 医学研究科, 講師 (00716186)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 光遺伝学 / 条件づけ |
Outline of Annual Research Achievements |
報酬に基づく古典的条件づけでは、動物に対して、学習前には無意味な物理的刺激(条件刺激)と報酬が一定の時間的関係で繰り返し提示される。前頭前野の一領域である眼窩前頭皮質(Orbitofrontal cortex: OFC)は、このような学習の結果得られた刺激-報酬間関係の学習記憶を未来の柔軟な適応行動制御に活かしうる領域である。しかし、従来の技術的な限界から、条件刺激と報酬に対してタイムロックした~秒単位のOFC神経細胞活動が、未来の適応行動制御におよぼす因果的役割は未解明である。 そこでまず一般的に行動実験に使用されるC57BL/6マウス系統を用いて、条件刺激(CS)1ー報酬獲得、およびCS2ー報酬なしの関係をまず学習させ、その関係を後に逆転させる(刺激1-報酬なし、刺激2ー報酬あり)逆転学習課題を確立した。次に、OFCにウイルスベクターを用いて赤色反応性の抑制性光遺伝学分子を発現し、上記の逆転学習時において、CS1提示後の報酬が提示されなくなることをマウスが認識するタイミング特異的に眼窩前頭皮質の活動を抑制した。すると、CS1に対する反応行動抑制(消去学習)が有意に遅延した。さらに興味深いことに、次の、新しく報酬と条件づけされたCS2に対する反応行動の上昇も遅延した。この抑制効果の理解を深める目的で、さらに、CS2の代わりにCS3(―報酬)を用いたところ、このCS3に対する反応行動の上昇は遅延しなかった。 また、ラットにおいて類似の逆転学習課題を確立し、OFCの下流の脳領域から活動計測すするための基盤となる実験セットを確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していたように、マウスの条件刺激ー報酬間関係の逆転学習における眼窩前頭皮質の状況および時間特異的な役割を明らかにしている。また、ラットにおける類似の課題において、眼窩前頭皮質から情報を受け取る領域の機能を検討するための準備を終え、データ取得を開始している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定していた、マウスの条件刺激ー報酬間関係の逆転学習における眼窩前頭皮質の状況および時間特異的な役割については、現在得ている成果を積み重ねて、論文にまとめる。ラットについては、予定している実験の準備はできているので、データ取得に集中する。
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