2016 Fiscal Year Annual Research Report
スパース性の拡張によるMRI圧縮センシングの新展開
Publicly Offered Research
Project Area | Initiative for High-Dimensional Data-Driven Science through Deepening of Sparse Modeling |
Project/Area Number |
16H01530
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
伊藤 聡志 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80261816)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 圧縮センシング / MRI / 高速イメージング / スパース |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,信号処理的な手法から撮像時間の短縮を目指す方法として,圧縮センシング(Compressed Sensing)のMRI応用が研究されている.平成28年度は圧縮センシングの実用化を目標とし,再生像の画質安定化ならびに画像の高品質化について検討を行った. 再生像の画質安定化では,ランダム間引き収集ではなく,等間隔間引き収集を基本とする画像再構成法を検討した.Curvelet変換をスパース化関数として利用し,かつ,展開様式を反復ごとに変えるMulti-scale Curvelet変換を採用した結果,ランダム間引き収集信号から再生された画像に比肩する再生像を得ることができた.これにより煩雑な信号の間引き法の選択に解放され安定した画質の画像再生が期待できる.研究成果は,日本医用画像工学会や日本磁気共鳴医学会の年次大会にて発表を行い,日本医用画像工学会では研究奨励賞を受賞した. 画像の高品質化では,通常の信号収集法ではなく,斜め方向に収集軌道をとるオブリークスキャンの検討を行った.本方法は,信号の高域まで収集することができるので,高分解能画像の再生が可能であり,かつ,アーティファクトの重畳が通常のスキャンより小さい.再構成シミュレーションの結果,通常法に比べて高分解能かつ低誤差の再生像を得ることができた.研究成果は,映像情報メディア学会冬季大会にて発表した.また,国際会議での発表を計画している.このように再生像の画質安定化と高分解能画像の再生という観点において新たな方法を提案し,それの有効性を示唆することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MRIに圧縮センシングを簡便に応用する方法として信号をランダムかつ収集密度を可変に取る方法が一般的である.しかしながら,再生像は分解能が低下する傾向があり,また,再生像の画質は信号間引きのランダム性と収集密度に依存し,安定した画質の再生像が得にくいという問題がある. [1] 再生像画質の安定化 本研究では,画質の安定化を図るべく,可変密度かつ等間隔で収集した信号から画像再構成を行う新しい方法を検討した.画像再構成を成功させるためには信号を収集する関数とスパース化関数のそれぞれの基底間の相互コヒーレンスが小さいことが必要となる.我々はCurvelet変換によってスパース化された空間では,信号の間引きによるアーティファクトを良好に除去できる特性に着目し.等間隔かつ可変密度収集により画像再構成を試みた.その結果,ランダムに信号を収集する従来の方法に比肩する画質の画像を得ることができた.さらに,ランダム収集にはない安定した画質の画像を得ることができた.本研究を発表した学生に対し,日本医用画像工学会より研究奨励賞が授与された. [2] 高分解能画像の再生 信号空間を斜め方向に走査する新たな撮像方式について検討を行った.この方法では,信号収集時間を変えることなく,信号空間の高域まで信号収集ができる.また,アーティファクトが斜め方向に現れるので,再生像への重畳が少ないことが期待される.シミュレーション実験の結果,高分解能かつ再生誤差の少ない画像を再生できる可能性が示された.以上の検討から,研究はおおむね計画通りに推移していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
MRIの2次元撮像に圧縮センシングを導入する方法として位相エンコード方向に信号を間引く方法が一般的である.しかしながら,画像のスパース性を仮定すること,ならびに信号空間の高域では信号の収集密度が低いことにより,再生像の分解能は低下する傾向がある.そこで,本研究では既存のMRIに変更を加えることなく再生像の分解能低下を抑制する方法として,3通りの方法を検討する. 第1の方法は,信号空間を斜め方向に走査する新たな撮像方式である.再生像を実関数と仮定する場合と空間的な位相分布を考慮する場合とで再生像の分解能を評価する. 第2の方法は,ハーフフーリエ法との併用である.MRIの信号は冗長性があり,空間的な位相変化が大きくない場合は,信号空間の全域の信号を収集しなくても画像再生が可能である.信号空間の制限された領域内で信号収集を行う場合は,信号収集数を同数として比較するとき全域を収集する場合に比べて高密度な収集が実現できる.圧縮センシングにおいて信号の収集密度はスパース性に関連して画像の細部の構造復元に重要な条件である.平成29年度は信号空間の制限と再生像の画質について検討を行う. 第3の方法は,マルチコントラスト再構成である.2次元像に対してレベルの異なる鮮鋭化処理を行うと3次元空間を構築できる.この3次元像を3次元のスパース化空間においてL1ノルム最小化を行うと,輪郭とコントラストの保存性に優れた画像再生が期待できる.本研究では,鮮鋭化の程度,レベルの異なる再生像の数などについて検討を行う. 研究まとめとして平成28年度から平成29年度までの研究を総括し,成果,課題を明らかにする.
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Research Products
(19 results)