2016 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙初期密度揺らぎの再構築による精密宇宙論の展開
Publicly Offered Research
Project Area | Initiative for High-Dimensional Data-Driven Science through Deepening of Sparse Modeling |
Project/Area Number |
16H01543
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
市來 淨與 名古屋大学, 基礎理論研究センター, 講師 (10534480)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 宇宙初期密度揺らぎ |
Outline of Annual Research Achievements |
ビッグバンの名残りである宇宙マイクロ波背景輻射 (CMB) の温度および偏光ゆらぎの詳細な観測によって、宇宙の構成要素と存在量、宇宙年齢などが明らかになった。解析では温度揺らぎのパワースペクトルなどの統計量から宇宙論モデルを検定するのが主要な手法である。しかしながら、統計量の推定には宇宙が一つしか存在しないことに由来する原理的な誤差(コスミックバリアンスと呼ばれる)が必ず付随し、この誤差が宇宙モデルの決定精度をリミットしている。本研究の目的は統計の推定に付随する誤差を越えた精密宇宙論を開拓することである。そのためにインフレーション期に生成されたとされる宇宙初期密度揺らぎを宇宙マイクロ波背景輻射揺らぎおよび遠方銀河団の散乱による偏光の情報を用いて直接推定および再構築を行い、揺らぎの分散といった統計量だけでなく、揺らぎそのものが時間発展していく様子を追うことで、宇宙モデルの決定を行うことを目指す。
銀河団に存在する自由電子が宇宙マイクロ波背景放射(CMB)を散乱すると偏光が生じる。この偏光は、銀河団からみたCMBの四重極分布によって決まる。従ってこの偏光は、宇宙の離れた場所での局所的なCMB揺らぎを再構築する手段を与えてくれる。本研究ではこの偏光から初期密度揺らぎのフーリエモードを構築することを試みた。遠方銀河団の偏光と、我々の観測できるCMBの偏光揺らぎの情報を用いることで、我々の位置から観測すべき温度揺らぎの四重極と八重極が再構築できることが分かった。これはWMAPやPLANCK衛星の観測で報告されている大角度スケールでの温度揺らぎの異常(小さな四重極揺らぎや揺らぎの整列)が宇宙論起源なのかどうかについての新しい検証方法となる点で重要な結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に記した密度揺らぎの再構築の方法として、銀河団を用いる方法については論文を一遍発表することができた。また、PLANCK衛星のデータからパワー・スペクトルを再構築する研究についても、解析は進んでおり、29年度には学術論文として発表できる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画にしたがって、宇宙初期密度揺らぎのパワー・スペクトルをスパースモデリングの手法を用いて再構築する研究を進める。また、パワースペクトルを用いることなく宇宙論パラメータを推定する手法についての定式化を進めている。この定式化を29年度中にまとめられるよう引き続き進めてゆく。
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Research Products
(3 results)