2016 Fiscal Year Annual Research Report
Deepening of spatial modeling of metal ore grade by a joint use of physical law and geostatistics
Publicly Offered Research
Project Area | Initiative for High-Dimensional Data-Driven Science through Deepening of Sparse Modeling |
Project/Area Number |
16H01545
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小池 克明 京都大学, 工学研究科, 教授 (80205294)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 空間モデリング / クリギング / 移流拡散方程式 / 黒鉱鉱床 / 斑岩銅鉱床 / 熱水流動 / 鉱床形成 / 多変量解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
世界的に金属需要の指数関数的増加が見込まれており,鉱床有望地における金属品位の高精度空間分布推定が不可欠である。このため本研究では,物理法則―地球統計学空間推定法(Spatial modeling by joint use of Physical law and Geostatistics:SPG)の改良・完成を目指す。 今年度は,まず金属濃度が地質に依存していることを考慮し,主成分分析(PCA)により,これらの数値型・非数値型データの依存性を直交化し,濃度推定精度の向上を図った。地質柱状図から主要地質タイプを選び,各ボーリングデータで相当する地質タイプには1,それ以外は0を与えたバイナリーセットを作成し,これと主要金属濃度を組み合わせてPCAを行った。得られた主成分値に対してクリギング計算,さらにその逆変換によって,地質タイプと金属濃度,および金属ペアの相関性をすべて含んだ金属品位の3次元分布の推定が可能になった。その手法をPCA-kriging(PCAK)と称した。秋田県北鹿地域での黒鉱鉱床への適用の結果,PCAKによれば通常のクリギング法よりも平滑化効果が改善され,濃度分布が詳細になることがわかった。 PCAKによる主要金属濃度分布を初期モデルとし,これに領域によって移流拡散方程式と伝導型方程式を組み込んだSPGにより,特にデータが疎の領域に対して妥当な空間分布推定が可能になった。別な対象地域であるインドネシアのスラウェシ島の斑岩銅鉱床では,高濃度部が金属によって異なり,これから鉱液の流動や変質帯の形成が推定できるという地質学的に意義のある成果も得られた。岩石コアの鉱物組成と金属元素濃度の分析も行い,SPGによる推定結果の妥当性を評価するともに,濃度の空間分布に関するスケール則も得られた。さらに,SPGと移流拡散方程式の組合せから熱水パスのトレーシングを試み,鉱物組成からは対象領域での温度環境を大まかに推定し,これらを鉱床形成プロセスの解釈に応用するところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的を達成するために,平成28年度は①ボーリングデータの取得と空間統計基本解析,②微分方程式への当てはめ,③岩石コアの鉱物組成と金属元素濃度の分析,④鉱床成因による領域分割,および⑤熱水パスのトレーシング,という研究項目を設定した。まず①に関しては,新たに対象としたインドネシアの斑岩銅鉱床でのボーリング調査データを多数収集でき,統計分析によって60種類の元素濃度の統計的性質や濃度の相関性が強い元素の組み合わせがわかるとともに,主要金属濃度,および2つの金属を組み合わせた濃度の空間的相関構造をバリオグラム解析により明らかにできた。②の検討では,日本の黒鉱鉱床と同様に金属濃度の空間分布は移流拡散方程式で近似でき,熱水の上昇・拡散に濃度分布が支配されたことがわかり,これをSPGに取り入れることができた。③では岩石サンプルを採取し,その構成鉱物とそれぞれの存在割合をX線回折分析で同定するとともに,コア断面の電子顕微鏡観察と蛍光X線分析で,微小領域での主要金属の濃度と存在形態を把握できた。SPGによる推定高濃度部と実際の濃度,および主要構成鉱物とを対応付けられた。④では地表浅部と深部では明らかに金属濃度の空間分布が異なることがわかり,天水の浸透による伝導型と熱水の移流拡散型がそれぞれ支配する領域を概ね分離できた。さらに,⑤ではSPGによる濃度空間モデルから移流速度と拡散係数を算出し,これらが特に大きな部分の中心線をトレースすることで熱水のパスを推定できた。 以上の取り組みと研究成果から,進捗状況は概ね順調と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は斑岩銅鉱床の濃度データと地質データを主成分分析に取り入れ,金属元素間,および地質-元素間の相関性を考慮したPCAKを改良・実行し,濃度分布推定精度を向上させる。この濃度分布とSPGを組み合わせ,熱水流動のパスを明らかにする。また,伝導型と移流拡散型の支配領域の境界決定にベイズ理論を応用し,各領域にSPGを適用することで,品位空間モデルの改良を図る。 次に,海底熱水鉱床を対象とし,沖縄トラフ西端付近の複数地点で実施されたボーリングによる調査データとコア試料を用いて,主要金属元素の空間的相関構造をバリオグラム解析によって明らかにする。海水の冷却,および移流拡散に伴う金属元素の濃集領域を区分し,それぞれを近似する微分方程式を求め,SPGによって金属元素濃度の空間分布を明らかにする。引き続いて,ボーリングコアから鉱物組成と元素濃度を分析し,熱水の主要パスと周辺の支脈パスの形態も濃度の空間分布から推定する。これらの組み合わせから,特に海底下の鉱床形成温度環境を明らかにする。さらに,対象域付近での鉱床有望地の位置を特定することを目指し,各熱水パスの幅,枝分かれパターンのフラクタル構造解析から広域スケールでの熱水パス分布パターンをモデル化し,熱水噴出域の間隔の推定を試みる。
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