2016 Fiscal Year Annual Research Report
ナノポアシークエンサーによるがん細胞の変異検出およびフェーズ情報解析手法の確立
Publicly Offered Research
Project Area | Conquering cancer through neo-dimensional systems understanding |
Project/Area Number |
16H01582
|
Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
鈴木 絢子 国立研究開発法人国立がん研究センター, 先端医療開発センター, 研究員 (00770348)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | がんゲノム / フェージング / ナノポアシークエンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
ナノポアシークエンサーMinIONより得られたロングリードデータからがん細胞の変異を検出する手法を検討した。肺腺癌培養細胞のデータをモデルとして、がん関連遺伝子および融合遺伝子について、予備的検討で取得したデータも含め、得られたシークエンスデータを詳細に解析した。従来型のショートリードシークエンサーと比較すると精度は低いが、大部分のシークエンスリードが1-3kbの増幅産物のほぼ全長をカバーしており、ロングリードを安定的にシークエンスできていることが分かった。アライメントにはLASTを用いており、MinIONロングリードに最適なパラメータを選択した。エラーによる偽陽性を避けるために、変異の前後3塩基が参照配列と完全一致しており該当箇所のシークエンス精度がより高いと考えられるリードを解析に用いた。変異リードの頻度が高い変異に関しては高い精度で検出することができたが、頻度が低いマイナー変異はエラーと見分けることが難しい場合もあった。日本人肺腺癌患者8症例におけるドライバー遺伝子の解析もおこない、それぞれの症例におけるドライバー変異を同定した。 薬剤感受性に関わるEGFR遺伝子のL858R変異と耐性に関わるT790M変異が同一DNAコピー上に起こっているかといった変異の相互関係性を明らかにするために、これら2つの変異をカバーするロングリードデータを解析した。その結果、H1975細胞ではT790M/L858R変異は同一DNAコピー上に存在することが明らかとなった。6%のリードはマイナーな集団およびシークエンスエラーを含んでいると考えられた。また、MinIONのロングリードによって得られたフェージング結果の妥当性を判断するために、合成ロングリードデータを解析した。EGFR遺伝子のT790M/L858R変異について合成ロングリード上でもMinIONから得られた情報と同様の結果が確認できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肺腺癌培養細胞の代表的ながん関連遺伝子の解析を行い、実際にMinIONロングリードデータから変異を検出することができた。精度よく変異検出をおこなうために解析方法について工夫をおこなったところ、欠失等の偽陽性やホモポリマー領域におけるエラーは見られたものの、メジャーな細胞集団における変異であれば精度良く検出できることを確認できた。さらに、ゲノム変異および多型間のフェージング解析も行い、一部サンガーシークエンスを用いた結果の確認もおこなった。これらのことから、ナノポアシークエンサーMinIONによる変異検出およびフェージング解析手法についての基礎検討はできたといえる。しかし、MinIONから得られるシークエンス量および精度の改良が飛躍的に進んでいるため、今後もデータに即した情報解析手法の検討を引き続きおこなう必要がある。 また、MinIONによるフェージング解析結果を評価するために、肺腺癌培養細胞のゲノムにおける合成ロングリードデータを解析した。MinIONロングリードでフェージング解析を行うだけでなく、合成ロングリードデータを用いた結果の確認も可能となり、今後はより精度の高いフェーズ情報を得られるようになったと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
ナノポアシークエンサーMinIONは、当初予想していたよりもさらに多くのシークエンスデータを出力できるようになり、精度の改良も著しく進んでいるため、肺がん臨床検体を用いた解析に向けて、ゲノム変異の検出について引き続き肺腺癌培養細胞を用いて最適な情報解析手法を検討する。特に弱点とされているホモポリマー領域の変異検出について、培養細胞を用いた検討を続ける。ホモポリマー領域の解析については最適な手法が見出されていないので、開発されているさまざまなベースコーラーおよびアライナーを用いるなど、解析手法の改良を検討する。また、引き続きがん細胞のゲノムフェージング解析を行う。MinIONロングリードデータから得られた結果を、合成ロングリードデータを用いて確認する。薬剤感受性変異と獲得変異の関係性に加えて、特に、転写制御領域の変異とそれらが制御する転写領域のアリル関係性も解析する。シングルアリルレベルでシークエンスデータを解析することで、がんゲノムの新しい側面を見出す。最終的には、再生検をおこなった肺腺がん臨床検体やリキッドバイオプシーサンプルなどを用いた解析への応用を目指す。 RNAサンプルの入手が困難な臨床検体を想定して、cDNAだけでなくゲノムDNAを用いたMinIONシークエンシングの実験および情報学的解析手法の検討を行う。ナノポアシークエンサーの改良が進む場合は、全ゲノムシークエンスを行うが、領域あたりの情報量が少なくなってしまうので、特にがん関連遺伝子のゲノムDNAを濃縮・抽出するための実験手法について情報収集を行う。
|
Research Products
(3 results)