2016 Fiscal Year Annual Research Report
難治性肺がんに対する術後再発リスクや治療応答性に関わるHLAアレルの同定
Publicly Offered Research
Project Area | Conquering cancer through neo-dimensional systems understanding |
Project/Area Number |
16H01583
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
白石 航也 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, ユニット長 (80609719)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | HLAアレル / 術後再発リスク・治療応答性に関わる因子の探索 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年のがん組織検体を用いた大規模なゲノム解析により、多くのがん種で多数の体細胞変異が検出されているが、分子標的となるドライバー変異は全てのがん組織で検出されるわけではない。一方で、体細胞変異が多いメラノーマでは、抗PD-1抗体への治療効果が期待されており、免疫応答の違いが治療効果と関連する可能性が示唆されている。肺がんはメラノーマと同様に体細胞変異が多く検出されるがん種であることから、同様に免疫応答の違いが治療効果に影響を与えている可能性がある。しかし、免疫応答に関わるHLA(Human Leukocyte Antigen:ヒト白血球抗原)領域は非常に多様性に富むため、ゲノム解析はあまり行われてこなかった。本研究の目的は、難治性非小細胞肺がんを対象としたHLAアレルと術後再発リスクやプラチナダブレット療法の治療応答性を規定するHLAアレルの同定である。検出力並びにHLAアレルの推定精度を高めるために、複数のGWAS解析を組み合わせたmeta-GWAS解析が重要となる。そこで本年度は研究計画どおり、一部検証研究に用いるサンプルより、Illumina OmniExpressExsome SNP chipを用いてタイピングを行い、もう1つGWASセットを作成した。またアジア人においてもHLAアレルの頻度や種類が異なることから、日本人集団におけるHLA領域のレファレンスパネルを基にしたHLAアレルの推定が重要となる。そこで、岡田教授らが開発したHLA imputation法を用いて、関連解析に必要な情報を本研究で取得した(Okada et al., Nat Genet 2015)。解析に必要な診療情報を更新して関連解析を実施し、候補となるHLAアレルを同定した。来年度以降は、得られた解析結果が正しいHLAアレルを推定しているかどうか確認する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は順調に推移している。研究計画どおり、検証研究に用いる一部のサンプルについてIllumina OmniExpressExsome SNP chipを用いてタイピングを行い、もう1つGWASセットを作成した。またアジア人においてもHLAアレルの頻度や種類が異なることから、日本人集団におけるHLA領域のレファレンスパネルを基にしたHLAアレルの推定が重要となる。そこで、岡田教授らが開発したHLA imputation法を用いて、関連解析に必要な情報を本研究で取得した(Okada et al., Nat Genet 2015)。解析に必要な診療情報を更新して関連解析を実施し、術後再発リスクに対する候補となるHLAアレルを複数同定した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度において実施した関連解析の結果を基に、関連が強く認められた上位HLAアレルもしくはアミノ酸置換を伴うSNPを対象にTaqMan法を用いてタイピングを実施する。但し、すべての検証研究を一度にできないこと、また予算の都合もあるため、解析対象に対して優先順位を決定し、順次解析を進めていく。但し、ゲフィチニブを受けたEGFR変異陽性腺がんは現時点では少ないため、症例が確保できた段階で再解析を行う可能性がある。治療効果もしくは術後再発リスクと関連が認められたHLAアレルに着目した体細胞の遺伝子異常の比較検討も合わせて行う。具体的には、ドライバー遺伝子ごとでの解析、遺伝子やメチル化発現解析データを用いたクラスター解析やパスウェイ解析等を行い、どのような遺伝子異常が特徴的に蓄積されているかを確認する。有望な結果が得られそうであれば、次回の本領域の公募研究に応募する。 本研究で有望な結果が得られた場合、特定のアレルに対して強い関連を示すことが予想される。本研究はあくまでHLAアレルの推定であることから、HLAアレルの実タイピングを行う必要性がある。そこで湧永製薬が発売しているHLAタイピング試薬を用いて、HLAアレルを決定する。既存の公開データベースを基に、構造解析等よりHLAアレルもしくはアミノ酸変化を伴うSNPの機能的意義についても検討する。得られた研究成果については、随時論文作成や学会発表・研究班で報告する。検証研究用のサンプルについては、他施設から本研究用に提供してもらえるように引き続き提携を進めて行く。
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