2016 Fiscal Year Annual Research Report
海洋混合層厚の変動が十年規模気候変動に果たす役割
Publicly Offered Research
Project Area | Ocean Mixing Processes: Impact on Biogeochemistry, Climate and Ecosystem |
Project/Area Number |
16H01589
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
東塚 知己 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (40376538)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 気候変動 / 海洋物理・陸水学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本公募研究では、観測データ、大循環モデルの結果、潮汐の18.6年周期変動を導入した大気海洋結合モデルの結果を解析することにより、混合層厚の長期変動による海面熱フラックスへの感度の長期変動が、太平洋十年規模変動に果たす役割を明らかにする。また、上記の応用として、南半球の十年規模気候変動において、混合層厚の長期変動による海面熱フラックスへの感度の長期変動や潮汐の18.6年周期変動が果たす役割を明らかにする。 本年度は、黒潮続流域の季節・経年変動スケールの変動に着目して研究を進め、特に秋から初冬(10~1月)にかけては、多くの月において、海面熱フラックス項が、水温前線を強化する方向に働いていることを明らかにした。また、潮汐の18.6年周期変動を導入した大気海洋結合モデルの結果を解析し、潮汐混合が強い期間と弱い期間の差を計算したところ、黒潮-親潮前線の南北にダイポール型の海面水温の差が生じていた。これは、主に、潮汐混合が強い時期には、水温が高く(低く)なる水温前線の北側(南側)で、混合層が深く(浅く)なり、冬季の海面冷却に対して感度が低く(高く)なるためであることが示唆された。 北太平洋の研究の応用として、南半球の主要な水温前線帯であるアガラス反転流域についても同様の解析を行った。その結果、この海域においても、水温前線の南北での混合層厚の差が、水温前線の強化・緩和過程において、重要な役割を果たしていることが明らかになった。 さらに、エクマン輸送は水温前線域の混合層の熱収支に重要な役割を果たすため、水温前線域の素過程の研究として、エクマン流に関する研究を行った。その結果、黒潮続流前線域では、密度の非一様性の効果が、大きいことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は、本研究課題の2年目に行う予定であった潮汐18.6年周期変動に関する研究も進めることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究で、太平洋十年規模変動において重要な役割を果たすことが期待される黒潮続流前線の強化・緩和過程に関する新たな知見が得られたので、この知見を生かして、太平洋十年規模変動のメカニズムの理解を進めていきたいと考えている。また、潮汐18.6年周期変動への応答も、混合層厚の重要性が示唆されたが、今後は、その混合層厚の変動メカニズムも明らかにしていきたいと考えている。この18.6年周期変動に関しては、北太平洋に限らず、南半球での変動についても調べていきたいと考えている。
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