2016 Fiscal Year Annual Research Report
海洋広域観測網による等密度面上塩分分布を利用した混合分布推定と長期変動の評価
Publicly Offered Research
Project Area | Ocean Mixing Processes: Impact on Biogeochemistry, Climate and Ecosystem |
Project/Area Number |
16H01597
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
纐纈 慎也 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究開発センター, 主任研究員 (30421887)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 北太平洋海洋循環 / 海洋混合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、北太平洋の等密度面上における塩分の分布に基づいて各所で塩分の収支を満たすような混合強度の三次元分布を推定することを目的としている。 本年度は、まず、期間、2000年から2015年(一か月毎)、鉛直20-28.2(0.05kg m-3毎)、水平1°×1°の等密度面上データセットから、15年に渡る平均等密度面上塩分分布、及び、期間内の変化の場を作成した。次にこの作成された3次元塩分分布に基づいて、移流拡散方程式を当てはめることで、等密度面拡散、等密度面を横切る拡散係数、及び、1000m深における地衡流場の推定を行った。 得られた混合強度の場(各拡散係数)と既往知見との比較を行ったところ大まかには一致していることを確認した。また、1000m深付近の密度面における溶存酸素分布と推定された地衡流の場がよく一致していることも確認できた。よって、本研究の手法により各拡散係数、及び、中層における流動場は十分によく推定されていると考えられる。 本研究の手法による推定は、1°×1°の塩分分布と可能な限り整合的な拡散・流動場分布を与える点が微細構造の観測などに基づく推定とは異なり、海洋内部の各種溶存物質の収支解析に直接適用しやすい点が利点である。そこで、既往の溶存酸素の3次元分布(World Ocean Atlas)を用い北太平洋亜熱帯循環内での溶存酸素の収支計算も行い、海洋内での大域的な生物による酸素消費量の鉛直分布を得られることが確認できた。今後は他の物質収支を検討することで、得られた拡散分布の妥当性を検討するとともに、拡散強度の影響について評価を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、拡散の三次元分布を得られている。これは予定通りの進捗といえる。また、この拡散の3次元分布を既往知見と比較を実施し比較的よい一致を示すことを確認することができた。また、それだけでなく、拡散強度と共に推定された中・深層の循環が推定計算に用いない海水中の物質分布(溶存酸素)とも整合的であることを確認している。観測からの直接的な推定においては従来流速がほぼ0と仮定していたような深度で既往知見と整合する3次元場が得られ、本研究の推定の妥当性がある程度評価出来ている点は次年度の成果の纏めに向け良い材料であるといえる。以上のような初期的な推定及びその評価については、国内学会、及び、国際シンポジウムで紹介しており成果公表の面でも順調に進めていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
ここまでの結果により、本手法により3次元的な混合強度分布がある程度評価可能であることが示された。この結果を定量的に取りまとめ雑誌などに公表することを平成29年度の目標とする。また、既往知見との比較の結果からは、得られた混合強度分布に基づいて水温塩分の時間変化の内訳を分解する試みや溶存酸素の生物による消費の様子についても解析できる可能性が示唆されたといえ、海盆スケールでの物質分布の収支の変化の内訳を明らかにするようなより発展的な解析を行う予定である。
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Research Products
(2 results)