2016 Fiscal Year Annual Research Report
グリア細胞による神経系発振ステート制御機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Non-linear Neuro-oscillology: Towards Integrative Understanding of Human Nature |
Project/Area Number |
16H01601
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松井 広 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (20435530)
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Project Period (FY) |
2016-06-30 – 2018-03-31
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Keywords | グリア細胞 / アストロサイト / 光遺伝学 / てんかん / 脳波 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経細胞は、活動電位をもって情報をコード化するが、活動電位自体はどれも同じ形をしている。よって、波形そのものではなく、活動電位の発火のタイミング、頻度、間隔などが情報の主体であると考えられている。特に、神経細胞が周期的に発火し、さらに、多くの神経細胞がこの周期性に同期しながら発火する現象が注目を浴びている。このような神経活動の発振現象の意味を探るには、人為的に発振ステートを遷移させるという実験的操作が有効である。本研究者は、広範囲の神経活動の発振ステートを支配しているのは、グリア細胞であるという仮説を立てた。そこで、オプトジェネティクスを用いて、グリア細胞の活動を光操作し、発振を止めたり、発振周波数を変化させるなどに挑戦した。また、てんかん発作を完全に封じ込めたり、睡眠の状態を変えたり、学習・記憶を改変したりするなどの行動学的にも現れる効果の細胞生理学的な基盤を解明することを目指した。 神経細胞に光感受性分子ChR2を発現する遺伝子改変ラットを使い、海馬に連発光刺激を連日送ったところ、同じ光刺激に対して、より過剰な興奮を示すようになった。このように発作がひどくなる現象は、キンドリングと呼ばれ、既に良く知られている。ところが、光刺激をさらに繰り返すと、今度は、次第に発作が生まれなくなり、神経発振を完全に局所に封じ込めることができるという結果が得られた。ここで、抑制作用を持つアデノシンの受容体を阻害する薬物を投与すると、再び、てんかん発作が生まれることなどから、神経からグリアへの繰り返しの刺激によって、グリア細胞の性質に可塑的な変化が生じ、グリア細胞からアデノシンが定常的に放出されるようになり、それが神経発振を抑えていると考えられる。また、脳内アデノシンの定常量を計測するため、マイクロダイアリシス実験を行い、質量分析にかけたところ、アデノシン量の増大が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、グリア細胞が、神経系の発振をいかようにもコントロールできる強力な作用を有していることを証明することを目指す。これらの作用は、単にChR2を発現させることによって、人工的に生まれたものではなく、生来のグリア細胞にもともと備わっている機能が、刺激によって、可塑的に表に出てきたと考えられる。既に、抗てんかん作用を持つラット脳を効率的に作り出す方法の開発には成功している。また、それぞれのステートの脳から、マイクロダイアリシス法を使って、連携研究者に送って、質量分析にかけてもらう道筋も付けた。
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Strategy for Future Research Activity |
なぜ、グリア機能の可塑的な変化が生まれるのかを明らかにするため、本研究では、それぞれのステートの脳を取り出し、急性スライス標本での電気生理学解析を通して、機能的に何が変化したのか調べる。また、免疫染色やin situ hybridization解析を通して、どんなタンパク質や受容体の発現量・発現パターンに変化が生じたのかなどを解析する。特に、グリア特有のGFAPや、グリアからの伝達物質放出に必要な陰イオンチャネル等に注目する。次年度は、さらに、代謝分子の変化にも注目し、これを可視化する方法を開発。代謝経路のバランスを左右する薬物がてんかん抑制に働く可能性を調べる。
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Research Products
(15 results)
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[Presentation] 精神は機能だ2016
Author(s)
松井 広
Organizer
伊香保BSの会
Place of Presentation
群馬大学刀城会館(群馬県)
Year and Date
2016-09-13 – 2016-09-13
Invited
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