2016 Fiscal Year Annual Research Report
自発的かつ柔軟な同期状態遷移を実現する脳神経ネットワーク構造と非線形性の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Non-linear Neuro-oscillology: Towards Integrative Understanding of Human Nature |
Project/Area Number |
16H01607
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
上田 肇一 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 准教授 (00378960)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 脳 / 自律分散システム / 柔軟性 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトの脳では,状況に応じて神経発火振動の同期・脱同期が調整され,同期領野を柔軟に変化させる。脳にみられる自律分散的ネットワークにおいて,柔軟なアトラクタ遷移が実現される数理的仕組みの解明は重要な課題である。その中心的課題は,局所的摂動に対して如何に大域的脳活動状態を適切に制御するかという点にある。その仕組みを明らかにするために,ネットワーク上の振動子モデルの作成とその数理解析を行った。ノード上に配置される素子を記述するモデルとしてMorris-Lecarモデルを採用した。モデルが有する双安定性を利用することによって,ネットワークの切断やノードの除去などによってネットワークに障害が生じた際に新たなアトラクタに確実に収束することを数値的に示すことに成功した。従来のモデルではノードの状態がオン・オフ(1と0)の定常状態として表現されていたが,本研究によって振動・定常の2状態でも記述することができることが明らかになった。
リーチング問題で現れるある境界値問題の近似解を求める数理モデルを作成した。提案するモデルは次のように構成した。(1)各関節の位置を空間ラティス上に配置された振動子の活性状態(アトラクター)として表現する。(2) 腕の長さと関節角の可動範囲の拘束条件を隣接ラティスの振動子をつなぐネットワーク構造で表現する。(3) 道具の利用は空間ラティスの増加で表現する。以上の構成方法により,数理モデルは腕の末端(手)の位置の変化に対して自発的に解を発見する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来のネットワークモデルでは,柔軟なアトラクタ遷移を実現させるためには精密なパラメータのチューニングが必要があったため,その条件を弱めることが目標の一つであった。Morris-Lecarモデルの分岐構造を用いることによってその課題を解決することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 今年度提案したモデルを階層型ネットワークに適用し,柔軟なアトラクタ遷移を実現させる。 (2) 階層型ネットワークに対する数理モデルの作成により,今年度より複雑な物理的拘束条件を持つ課題に対するソルバーを開発する。 (3) てんかん発作の発生機構を解明するために,数理モデルを作成する。
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