2016 Fiscal Year Annual Research Report
「阿吽の呼吸」の神経基盤
Publicly Offered Research
Project Area | Non-linear Neuro-oscillology: Towards Integrative Understanding of Human Nature |
Project/Area Number |
16H01627
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
本田 学 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第七部, 部長 (40321608)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 脳・神経 / 神経科学 / 脳波 / 同期 / 芸術諸学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、大規模な人間集団の同期現象によって魅力的な芸術表現を実現している典型例として、インドネシア・バリ島の祭祀祝祭芸能「ケチャ」をとりあげ、その表現行動を支える脳機能の同期性を明らかにすることにより、「阿吽の呼吸」のコミュニケーションを支える神経基盤に迫る。そのために、ケチャ演奏中の複数被験者から脳波同時計測を行い、個体間脳波成分の同期の程度と表現されたリズムの同期性との関連を検討する。平成28年度は、以下の研究項目について探索的検討を行った。 1.個体間自発脳波同期性評価手法の開発:カエルの鳴き交わしの同期現象がケチャのリズムパターンと非常に類似性があることが、領域内共同研究によって明らかになったため、自然な同期現象を実現するために脳波α波パワーに着目して解析する手法について検討した。 2.演奏音評価手法の開発:ケチャの演奏音を広帯域録音し、16ビートを形成する各パルス音波形のエンベロープを抽出し、その拡がり、前後パルスとの分離度合い、パルス間隔のばらつきなどから、演奏音の同期性を評価する手法を検討した。 3.脳波・演奏音同時計測:6名の異なる被験者から同時に脳波を記録するシステムを構築し、演奏中にアーティファクトをできるだけ抑えた状態で脳波記録する手法を探索的に検討した。 4.モデル研究:演奏者の空間的配列がリズムパターン形成に及ぼす影響についてモデル化とシミュレーションを用いた検討を領域内共同研究として行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画した内容は概ね順調に進行している。それに加えて、領域内の共同研究により、カエルの鳴き交わしの同期現象がケチャのリズムパターンと類似していることが明らかになり、カエルの鳴き声の解析手法を本研究にも導入することになった。また、演奏者の配列がリズムパターン形成に及ぼす影響についてモデル化とシミュレーションを用いた検討を領域内共同研究として行った。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き以下について検討する。 1.個体間自発脳波同期性評価手法の開発:カエルの鳴き声の同期現象に着目し、その分析手法を導入した解析法を開発する。2.演奏音評価手法の開発:28年度に検討した内容をさらに深める。3.脳波・演奏音同時計測:脳波と演奏音の同時記録を実施する。4.ケチャ演奏に伴う自発脳波同期性の検討:上記で記録した脳波データの同期性を、研究項目1で開発した解析法によって評価する。基本的な比較は、ケチャ演奏時と非演奏時でどのように同期性が変化するかを比較する。5.表現内容と自発脳波同期性との関連の検討:研究項目1で開発した個体間脳波の同期性評価法と、研究項目2で開発した演奏音の同期性の評価とを組み合わせ、両者の関連について検討する。6.モデル研究:昨年度の検討をさらに深め、ケチャパターンのモデル化を試みる。
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