2016 Fiscal Year Annual Research Report
Immune System Plasticity and Failure in Response to Gravitational Changes –An Approach to Understanding Immunological Memory –
Publicly Offered Research
Project Area | "LIVING IN SPACE" - Integral Understanding of life-regulation mechanism from "SPACE" |
Project/Area Number |
16H01638
|
Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
前川 洋一 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 教授 (10294670)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 免疫学 / 感染症 / 免疫記憶 / 免疫不全 / 潜伏感染 / 再活性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.「重力変化により免疫記憶機構(メモリーT細胞と抗体親和性成熟)が受ける影響」:平成28年度はCD4 T細胞のメモリー形成について解析を行った。C57BL/6マウス(CD90.2)に卵白アルブミン(OVA)特異的T細胞受容体OT-IIを持つCD4 T細胞(CD90.1)を移入しOVAで免疫した。その後3週間2g環境で飼育した後、免疫所属リンパ節中の移入OT-II細胞についてフローサイトメーターによりメモリーサブセットを中心に解析した。2g環境で飼育したマウスでも抗原特異的CD4T細胞は活性化しCD44陽性となっていた。対照群(1g)では、移入したOT-II T細胞の約16%がCD62Lを発現するセントラルメモリー様細胞であったのに対し、2g群では同様の表現系を示す細胞は6%に減少していた。このことから、2g環境のストレスが活性化CD4 T細胞のメモリーサブセット形成に影響を与える可能性が示唆された。 2.「免疫記憶機構への影響による感染防御能(初感染、再感染、潜伏感染)の変化」:遠心装置を用いた感染実験を実施するために、感染マウス用飼育ケージを作製した。本飼育ケージを用いて、細胞内感染菌であるListeria monocytogenes(リステリア菌)を感染させたマウスを過重力環境下(2g)で1ヶ月飼育した。過重力ストレスによる感染抵抗性免疫記憶への影響を検討するため、現在このマウスに致死量のリステリア菌を再感染させた経過観察中である。 3.「極限ストレスの免疫システムへの翻訳機構の分子基盤」:1より2g環境での免疫応答で活性化CD4 T細胞のメモリーサブセットに影響が認められたため、免疫応答の場であるリンパ節での遺伝子発現を網羅的に解析した。2g環境で有意に発現低下が認められる遺伝子が存在していた。一方、2g環境で発現上昇する遺伝子群には統計的効果が高いものはあまり認められなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は免疫記憶の維持における重力変化ストレスの影響を検討することができた。これまでの検討では、免疫記憶の維持への影響は限定的であると考えられた。また、潜伏感染に対する宿主免疫系に及ぼす影響についても計画していたが実験器具の開発に時間を要したため、平成29年度に実施する予定である。この点では計画より若干遅滞していると言える。 一方、免疫記憶の形成への影響についても検討したところ、特定の記憶T細胞分画に変化が認められた。この知見は従来報告されていないものであるため、今後その分子基盤の詳細を検討する予定である。この点は想定以上の知見が得られていると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後、平成28年度に得られた結果をもとにそれぞれの検討項目についてさらに解析を進めていく。 1. 平成28年度に実施した研究からセントラルメモリー様T細胞が2g環境で減少していたので、その機序に迫る解析を行う。また、セントラルメモリー様T細胞の減少が2次免疫応答に与える影響については検討項目2とも関連するため、両検討項目の結果を統合的に判断する。 2. 平成28年度はリステリア菌感染実験について1回しか実施できなかった。また、現時点でその実験の最終結果は得られていない。1回目の実験をとりまとめたうえで、以降の感染実験を立案・実施していく。具体的にはリステリア菌感染(再感染に対する防御免疫)とトキソプラズマ原虫感染(潜伏感染に対する免疫)を実施する予定である。 3. DNAマイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現解析の結果、免疫応答の場であるリンパ節において2g環境で発現が変化する遺伝子群が存在した。発現の変化の意義について、またその変化とセントラルメモリー様細胞の減少の関連について今後解析を進める。興味深い遺伝子ついて発現細胞や発現量の変化について解析し、幾つかの遺伝子については遺伝子改変マウスを作出しその機能を明らかにしていく。
|