2016 Fiscal Year Annual Research Report
微小重力環境における宿主-病原体の相互作用変化をもたらす分子基盤の解明
Publicly Offered Research
Project Area | "LIVING IN SPACE" - Integral Understanding of life-regulation mechanism from "SPACE" |
Project/Area Number |
16H01644
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
白井 睦訓 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20196596)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 微小重力 / 宿主-病原体 / シグナル伝達系 / オルガノイド / メダカ |
Outline of Annual Research Achievements |
宇宙船内環境における細菌などの微生物感染は、宇宙飛行士の健康に深刻な影響を与えうるリスク要因の一つである。近年、微小重力環境において宿主に対する微生物の増悪化が報告されるなど、宇宙環境では宿主(ヒト)-病原体の相互作用の変化が微生物感染リスクに深く関わる可能性が明らかになってきた。しかしながら、微小重力がいかにして宿主-病原体の関係性に影響を与えるのかについて、詳細な分子機構は依然として不明な点が多い。そこで本研究では、ヒト三次元オルガノイド培養系ならびにモデル生物メダカを用いて、微小重力環境と地上における病原細菌感染時の比較解析を行い、発現変動の顕著なシグナル伝達系を網羅的に明らかにすることを目的とした。特に、我々がこれまで注目してきた重力-YAPシグナル伝達系の影響に着目し解析を試みた。細菌感染オルガノイドを用いたトランスクリプトーム解析を実施するため、腸の三次元オルガノイド培養系の樹立を目指した。マウス小腸組織から幹細胞を含む陰窩構造を分離し、マトリゲルに包埋後に成長因子を含む培地を添加した結果、培養8日目には体内の陰窩構造に類似した構造体を観察することができ、その後数週間の長期培養を行うことに成功した。現在、作成したオルガノイドにサルモネラ菌を感染させる実験系の確立を試みている。また、RNA-seq法によりメダカ野生型胚とYAP変異体胚との間の比較トランスクリプトーム解析を行った結果、免疫系のシグナル伝達分子などに顕著な発現変動が認められた。このことから、重力耐性遺伝子YAPが多数の感染制御分子の発現を制御していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験計画に沿って腸組織から幹細胞を含む陰窩構造を分離し、腸オルガノイドの数週間にわたる長期培養を行うことに成功しており、現在では作成した腸オルガノイドにサルモネラ菌を感染させる実験系の樹立を試みる段階まで達しており、おおむね一連の研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今回樹立に成功した三次元オルガノイドは、年単位の長期的な培養が可能であることに加えて、ゲノム編集技術を適用して遺伝子改変することが容易であることから、将来の宇宙実験におけるモデル実験系として中心的な役割を果たすことが期待される。今後、微小重力環境におけるサルモネラ感染オルガノイドを用いた解析を進めることにより、宇宙環境が食中毒原因菌に及ぼす影響を明らかにすることにつながり、将来の超長期の宇宙飛行における食品衛生リスクマネージメントの観点から重要な知見をもたらすものと考えている。
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[Journal Article] The mevalonate pathway regulates primitive streak formation via protein farnesylation2016
Author(s)
Yoshimi Okamoto-Uchida, Ruoxing Yu, Norio Miyamura, Norie Arima, Mari Ishigami-Yuasa, Hiroyuki Kagechika, Suguru Yoshida, Takamitsu Hosoya, Makiko Nawa, Takeshi Kasama, Yoichi Asaoka, Reiner Wimmer Alois, Ulrich Elling, Josef M. Penninger, Sachiko Nishina, Noriyuki Azuma & Hiroshi Nishina
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Journal Title
Scientific Reports.
Volume: 6
Pages: 37697
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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