2016 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙放射線被ばくによる発がんリスクの推定:病理およびゲノム変異解析から
Publicly Offered Research
Project Area | "LIVING IN SPACE" - Integral Understanding of life-regulation mechanism from "SPACE" |
Project/Area Number |
16H01654
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
柿沼 志津子 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 放射線影響研究部, 部長(任常) (20392219)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 宇宙放射線 / 被ばく / 発がん / マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
宇宙環境おいて、ヒトは常に宇宙放射線を被ばくするため、将来の長期滞在に向けて最も関心の高い人体影響は、宇宙放射線被ばくによる発がんと継世代影響である。宇宙放射線の成分は地上と異なり、陽子線、中性子線に加えて、鉄イオンのような重粒子線が含まれるが、その発がんリスクのデータは不足している。我々は、これまでにB6C3F1マウスに鉄イオン、シリコンイオン、またはアルゴンイオンを照射した実験群の終生飼育を終了している。また、誘発された病変については、アーカイブサンプルとして、凍結サンプルと病理組織標本が保存されている。 本研究では、①病理解析を行い各臓器の発がんリスクを求め、さらに、②ゲノム変異解析を行うことでLETにより発がんメカニズムが異なるかを検討し、重粒子線(鉄イオン、シリコンイオン、アルゴンイオン)による、発がんリスクとゲノム変異メカニズムを新たに提示することを目的とする。 本年度は、特に照射後に発生した病変の病理標本について病理解析を進めた。重粒子線イオン線照射後に発生したマウスの病理切片(HE染色済み)をデジタル画像として保存した。このデータについて、病理専門家の指導の下、病変ががんであるかどうかを判定した。自然誘発がんに比べて特徴的な病理組織が観察される傾向が明らかになってきた。 また、リンパ腫のタイプ(Tリンパ腫または Bリンパ腫)を同定するための免疫染色の系の確立をした。また、リンパ腫に関して、遺伝子変異解析の為のDNA抽出方法についても検討を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、特に照射後に発生した病変の病理標本について病理解析を進めた。その結果、肝細胞がん、肺がん、リンパ腫に加え、肺や肝臓に遠隔転移を示す骨肉腫や肺に転移した皮膚がんを認めた。また、肝細胞がんと皮膚の扁平上皮がんが同時に認められる二重がんや肝細胞がん、肺腺腫、卵巣の悪性顆粒膜細胞腫を認める三重がんを有する固体も観察された。 また、一部のがんのサンプルについて、遺伝子解析の検討を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、病理解析で明らかになったがんについて、遺伝子変異解析を進め、高LET放射線に被ばくした後発生したがんのゲノム変異の解析し、その特徴を調べる。
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