2016 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙生活での健康リスク低減を目指した運動による生体恒常性の頑健性獲得機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | "LIVING IN SPACE" - Integral Understanding of life-regulation mechanism from "SPACE" |
Project/Area Number |
16H01656
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Research Institution | Okazaki Research Facilities, National Institutes of Natural Sciences |
Principal Investigator |
冨田 拓郎 (沼賀拓郎) 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 助教 (60705060)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 活性酸素 / Caシグナル / 心臓線維化 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. TRPC3-Nox2機能連関による心臓の硬さ制御 組織の線維化は多くの疾患において機能不全を起こした終末期における病態として認識される。心臓への長期的な機械負荷刺激は間質の線維化を惹起する。本研究において、我々は、カルシウム透過性カチオンチャネルであるTRPC3がNADPH oxidase 2 (Nox2)と安定複合体を形成し、機械的伸展誘発性のROS産生に寄与することを明らかにした。TRPC3はNox2と複合体を形成することによりNox2タンパク質を安定化させた。TRPC3欠損マウスを用いた結果、大動脈狭窄による圧負荷で惹起される心肥大は全く抑制されなかったものの、心臓の酸化ストレスと線維化(硬化)がほぼ完全に抑制されていた。以上のことからTRPC3-Nox2機能的連関は、圧負荷による心臓の硬度(線維化)を制御する重要な創薬標的となりうることが示唆された。 2. ドキソルビシン心筋症におけるTRPC3-Nox2複合体の役割 ドキソルビシン(DOX)は様々な悪性腫瘍に有効な抗腫瘍薬である一方で、重篤な心毒性が副作用として問題視されている。TRPC3欠損マウスまたはTRPC3-NOX2複合体形成阻害剤投与マウスにDOX を投与したところ、野生型マウスで観察される重篤な心機能低下と心重量低下が、TRPC3欠損または心筋細胞特異的TRPC3-NOX2複合体阻害ペプチド発現によってほぼ完全に抑制された。DOX投与マウス心臓ではTRPC3とNox2の発現量が増加しており、Nox2発現増加率と心重量低下が正に相関していた。DOX投与マウス心臓では低酸素シグナルが活性化しており、低酸素ストレスがTRPC3-Nox2複合体形成を促進している可能性が示された。以上の結果よりTRPC3-NOX2複合体阻害がDOXによる心毒性軽減につながる新たな分子標的となることが強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに我々は、心臓における機械的刺激に対する慢性的な組織応答においてTRPC3チャネルが重要な役割を果たしていることを明らかにした。TRPC3チャネルの活性化は、機械的刺激を細胞内におけるNox2を介した活性酸素種生成へと化学的に変換することに重要であった。この活性酸素によるシグナルは細胞骨格である微小管の再編成を惹起することを明らかにした。この活性酸素種の生成機構は、慢性化した心不全モデルにおいて心臓線維化の増悪因子として働いていた。これまでに運動負荷が心不全の予防につながることはよく知られており、Nox2の活性抑制もその一つとして報告されている。本研究において、TRPC3の存在がNox2の発現上昇および活性制御に必要であることが明らかにできた。現在、自発運動によるNox2の発現抑制機構におけるTRPC3の関与を明らかにしようとし始めている。運動による健康増進効果の標的の一つとしてTRPC3-Nox2の機能連関を明らかにできたことは、大きな進展と考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までの研究において、筋組織における活性酸素種生成がその恒常性維持において重要であり、その制御を担う分子機構の一つとしてTRPC3チャネルとNox2の機能連関を明らかにしてきた。興味深いことに、このTRPC3-Nox2の連関は心臓の肥大・線維化だけでなく心臓の萎縮においても重要な役割を有していた。宇宙空間では、血行力学的負荷の低下による心臓の萎縮が起こることが知られている。つまりTRPC3-Nox2の機能連関を適切にコントロールすることは、筋委縮に対する新たな予防策あるいは改善策の開発につながることが期待される。多くのマウス心不全モデルにおいて、自発運動は予防および予後改善効果を有することが明らかにされている。これまでの予備検討において、自発運動負荷を与えたマウスにおいてはNox2の顕著な発現抑制を観察できている。このことから、運動負荷は心臓のNox2の発現を抑制する何らかの因子が増減することが予測される。これまでに我々はTRPC3のC末端の部分配列がNox2の発現に重要であることを見出している。そこで、この部位を標的として、Nox2以外の相互作用因子を網羅的に解析し、自発運動負荷によるNox2の抑制機構を明らかにする。その機構を標的とする創薬あるいは物理的療法の開発は、新たな筋委縮症に対する治療法の開発につながることが期待される。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] TRPC3 positively regulates reactive oxygen species driving maladaptive cardiac remodeling.2016
Author(s)
Kitajima N., Numaga-Tomita T., Watanabe M., Kuroda T., Nishimura A., Miyano K., Yasuda S., Kuwahara K., Sato Y., Ide T., Birnbaumer L., Sumimoto H., Mori Y. and Nishida M
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 6
Pages: 37701
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] TRPC3-GEF-H1 axis mediates pressure overload-induced cardiac fibrosis.2016
Author(s)
Numaga-Tomita T., Kitajima N., Kuroda T., Nishimura A., Miyano K., Yasuda S., Kuwahara K., Sato Y., Ide T., Birnbaumer L., Sumimoto H., Mori Y. and Nishida M.
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 6
Pages: 39383
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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