2016 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙環境における線虫の老化とその制御機構
Publicly Offered Research
Project Area | "LIVING IN SPACE" - Integral Understanding of life-regulation mechanism from "SPACE" |
Project/Area Number |
16H01657
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
本田 陽子 早稲田大学, 理工学術院総合研究所(理工学研究所), その他(招聘研究員) (90399460)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 宇宙 / 老化 / 寿命 / 線虫 / 遺伝子発現 / 活動度 / DNAマイクロアレイ解析 / RNAseq解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物は様々な環境要因に応答し寿命や老化速度を決定していると考えられている。線虫C.elegansでは温度、酸素濃度、食餌量などがそれぞれ特異的な遺伝子ネットワークを介して寿命や老化速度に関与するシグナル伝達を変化させることが報告されている。一方「重力」は重要な環境要因であるが、寿命や老化速度への影響についてはこれまでよくわかっていなかった。そこで「宇宙での寿命の変化を線虫を用いて調べる」ことを目的としてJAXAとの共同研究で宇宙実験「宇宙環境における線虫の老化研究」を実施した。 線虫の野生体N2とインスリンシグナルの関与を明らかにするため短寿命変異体daf-16(FOXO転写因子ホモログ)を用いた。線虫を若齢成虫まで同調培養し、観察容器と凍結用バッグに封入した。観察実験群は軌道上μG群、軌道上1G群、地上対照群の3群について1日につき3分間の動画を全個体が動かなくなるまで撮影した。凍結バッグは野生体N2については培養開始後12日および22日目、daf-16変異体については14日目に凍結した。 3分間の動画で全く動かないものを死亡個体として寿命を解析した。野生体N2とdaf-16変異体それぞれについて軌道上μG群、軌道上1G群、地上対照群との平均寿命を比較した。最も活発に動きがみられた10秒間中に体を曲げる回数を測定し、活動度として定量化し、加齢に伴う変化を解析した。宇宙軌道上で凍結された線虫サンプルより総RNAを抽出し、DNAマイクロアレイ解析およびRNAseq解析により遺伝子発現解析を行った。培養上清をメタボローム解析に供した。 地上実験で野生体N2、長寿命変異体daf-2、二重変異体daf-16; daf-2に遠心力により10Gおよび100Gの過重をかけ、寿命と活動量を測定した。野生体N2、daf-16変異体を100Gの過重力下で培養し、同様に遺伝子発現解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
遺伝子発現解析について、平成28年度科学研究費助成事業『学術研究支援基盤形成』の「先進ゲノム支援」の支援課題に採択され、RNAseqDNAを行っていただくことができた。それにより当初予定していたDNAマイクロアレイ解析だけでは検出できなかった遺伝子の発現解析を行うことができた。 また本研究課題が所属する新学術領域「宇宙に生きる」の班員との共同研究で、プロテオーム解析を行っていただくことができた。 当初の計画になかった線虫培養上清のメタボローム解析を追加して行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は遺伝子発現解析の結果より、DNAマイクロアレイ解析とRNAseq解析の両方で宇宙μG環境における発現が同様に有意に上昇および低下している遺伝子に着目し、それらの欠損変異体を用いて過重下で培養し、寿命がどのように変化するかを明らかにする。このようにして重力感知やそれに伴う寿命や老化速度の決定に関与する遺伝子群を明らかにしていく予定である。
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