2016 Fiscal Year Annual Research Report
Role of partial information of luminance histogram and contribution of spatial resolution in material perception
Publicly Offered Research
Project Area | Understanding human recognition of material properties for innovation in SHITSUKAN science and technology |
Project/Area Number |
16H01658
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
栗木 一郎 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (80282838)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 質感 / 広輝度帯域 / HDR / 空間周波数 / ヒストグラム / 画像統計量 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,質感知覚の元となる表面知覚の必要条件について研究する.特に陰影を構成する低輝度成分(暗部)とテクスチャの物体内空間周波数 (cycles per item) 特性を明らかにする事を目的として研究を行った.本研究では,「暗部の情報が物体表面(拡散反射)知覚を支配する」という仮説について,広輝度帯域(high dynamic range: HDR)の視覚刺激を用いた心理物理実験により調べた.暗部は主に素材表面の構造に基づく陰影に起因しているが,布の織り目まではディスプレイで再現できず正確な材質感が得られない場合がある.他方,織り目の細部が完全に再現されなくても質感を知覚できる場合もある.これらの状況を考慮しつつ,物体サイズに依拠した空間周波数の尺度である「cycles /item(物体サイズ当たりの周期数)」にも着目し,適正な質感情報を与える空間的精度要件について心理物理学的に調べた. 4種類の材質(石,布,革,木)の平板画像71枚を用意し,その輝度ヒストグラムを作成した.画像の平均輝度よりも高い輝度をもつ画素の輝度コントラストを1/5に圧縮した画像,平均輝度より低い輝度の画素の輝度コントラストを1/5に圧縮した画像の2種類を用意し,元画像と質感を比較する課題を被験者に行わせた.平均より高い輝度帯域の情報が重要な材質の場合には高輝度温存,低い輝度帯域の情報が重要な材質の場合には低輝度温存の画像が選択されることが予想される.10名の被験者に2回ずつ実験を行わせた結果,高/低輝度帯域を温存した画像の選択率は材質に依存して異なることが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光沢を持たない平板な画像を視覚刺激として,4種類の材質(石,布,革,木)について平均輝度より高い/低い輝度成分が質感知覚に与える寄与について心理物理学的な実験で明らかにすることができた.これは当初の目標である,輝度ヒストグラム情報の高い/低い成分が質感に与える影響を調べる事に該当する.当初のデータは得られ,画像統計量と被験者の選択との間の相関を取る事によって,今後,空間周波数(cycles/item)に着目した画像要素と質感知覚の関係が解明できることが明確になった. 一方で,画像を提示する装置として用いている有機 EL ディスプレイは寿命が短いことが知られており通常2年程度と言われているが,研究用途で用いる際には可能な限り最善の性能を保った状態で研究を行うことが望ましい.また,有機ELディスプレイは最高輝度が数 100 cd/m^2 程度であり,自然に存在する物質の最高輝度である約 1000 cd/m^2 に及ばない問題がある.すなわち現在の実験環境は,室内における質感印象の評価はできても屋外での観察時に同じ理論が汎化できるかを解明することができない.そこで,次の研究ステップに進むにあたり,より安定して広輝度帯域を表示できるディスプレイを導入することを検討している.
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Strategy for Future Research Activity |
まず4つの材質に関して,高輝度/低輝度成分のいずれの情報が重要な情報であると被験者が感じたかについて得られたデータを,画像統計量との観点において解析する.画像統計量としてはまず,平均,分散,歪度,尖度などの比較的低い次元の画像統計量を用いることから検討を開始する.さらに,布地の織り目や木目などの構造は,画像の中で比較的高い空間周波数(細かい)構造として存在することから,空間周波数(cycles/item)に分割した画像において,統計量と被験者の応答との相関を解析する. 研究を行う途上で,これまでの研究における刺激画像の操作方法では,平均輝度が変化することが判明した.質感の判定を行う上で,視野全体の中における高い/低い輝度の成分が影響しているのか,画像の中で相対的に高い/低い輝度成分が影響しているのかを明らかにする必要が生じて来た.この問題を根本的に明らかにする一つの方法として,視野の中で相対的に高い/低い輝度帯域におけるコントラスト感度を測定することを計画している.例えば低い輝度成分において細かい構造を観察する課題に適したコントラスト感度を持っていれば,これまでに得られた実験結果を理論的に説明することができる.そこで,広輝度帯域の視野において,高い/低い輝度領域におけるコントラスト感度特性の測定を行う.
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