2016 Fiscal Year Annual Research Report
質感認知の異文化比較研究
Publicly Offered Research
Project Area | Understanding human recognition of material properties for innovation in SHITSUKAN science and technology |
Project/Area Number |
16H01664
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
高橋 康介 中京大学, 心理学部, 准教授 (80606682)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 文化比較 / フィールド実験 / 質感 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では生まれ育った地域や文化の視覚環境が質感認知にどの程度、どのように寄与しているのか解明するという質感認知の異文化比較を目的としている。このためには、世界の諸地域における視覚環境(及び聴覚環境)を可能な限り統制された条件で収集し、その特性(特に質感認知に関わると考えられる統計的性質)について定量的に評価比較することが必要である。 一般に公開されている映像は観光地など撮影者のバイアスが多分に入っており住民視点の映像は少ないため、我々研究グループではフィールドワーカーとの議論を通して環境情報収集のプロトコルを定めた上で、複数地域にて映像音声を収集した。2016年度は連携研究者との協力体制を構築し、アフリカ(カメルーン諸地域)、北米(カナダ)、北欧(フィンランド)、東南アジア(インドネシア、ラオス)などの諸地域から、環境映像の収集を終えている。現在、収集した映像・音声の統計量抽出を行っている。さらに、各地域の環境情報に弁別可能な特徴があるのか、あるのならばどのような統計的性質が重要であるのか検討するために、生の映像・音声、及びさまざまな統計的モジュレーションを施した映像・音声を刺激として呈示し、その環境情報に対する親近性及び地域推定を予備的実験として行う。 さらに、人類学者を中心とするフィールドワーカーとの連携による、持ち運び可能なフィールド実験の試みは、方法論自体の新規性が高い。このため、本研究の内容、意義を含め、国内外の学会発表、シンポジウム企画・開催などを行い、異分野研究者へのアウトリーチ活動を進めた。文化人類学会分科会「異分野から見た文化人類学」オーガナイズ及び発表(「フィールドにおける認知実験―認知心理学者という立場からの随想」)、IACCP2016における発表などを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2016年度はフィールドワーカーとの議論を通して環境情報収集のプロトコルを定めた上で、複数地域にて映像音声を収集した。連携研究者との協力体制を構築し、アフリカ(カメルーン諸地域)、北米(カナダ)、北欧(フィンランド)、東南アジア(インドネシア、ラオス)などの諸地域から、環境映像の収集を終えている。具体的には本プロトコルでは (1) 水平360°定点映像(HMDにて視聴可能)、 (2) アクションカメラによる移動時擬似視点映像、(3) バイノーラル録音による環境音の3種類の環境情報を朝 (~10:00)、昼 (11:00~13:00)、夕方 (15:00~17:00) の各1回、撮影者バイアスを防ぐためにたまたまいた場所で5から10分程度ずつ収集することとした。現在、収集した映像・音声の統計量抽出を行っている。 人類学者を中心とするフィールドワーカーとの連携による、持ち運び可能なフィールド実験の試みは、方法論自体の新規性が高い。このため、本研究の内容、意義を含め、国内外の学会発表、シンポジウム企画・開催などを行い、異分野研究者へのアウトリーチ活動を進めた。文化人類学会分科会「異分野から見た文化人類学」オーガナイズ及び発表(「フィールドにおける認知実験―認知心理学者という立場からの随想」)、IACCP2016における発表(”Psychological experiment all over the world: an interdisciplinary collaboration”)などを行った。 一方で、異文化でのフィールド実験については、渡航調査許可に時間を要していること、ユニバーサルな質感テストバッテリーの準備を待ったことから、2017年へ持ち越しとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度は、(1)環境映像の収集と解析、(2)環境映像の評価実験、(3)フィールド実験を実施する。(1)及び(2)では、現在、収集した映像・音声の統計量抽出を行っている。さらに地域を増やした上で、各地域の環境情報に弁別可能な特徴があるのか、あるのならばどのような統計的性質が重要であるのか検討するために、生の映像・音声、及びさまざまな統計的モジュレーションを施した映像・音声を刺激として呈示し、その環境情報に対する親近性及び地域推定を実験として行う。本項目は当初予定にはなかったものであるが、収集した環境映像を精査する中で、地域推定課題の可能性に気づき、追加したものである。このために非常勤研究員を1名雇用する。 (3)のフィールド実験は本研究計画の主たる目的であり、2017年度の海外渡航及び調査許可取得手続きを現在進めている。計画班との連携によるユニバーサルな質感テストバッテリーと持ち運び可能なタブレット実験の準備も順調に進んでおり、予定通り進めば夏にはフィールド実験を実施できる予定である。 以上の結果をまとめて、学会発表、論文発表などを行う。
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Research Products
(8 results)