2016 Fiscal Year Annual Research Report
Psychological and neural basis of precise visual memory for Shitsukan
Publicly Offered Research
Project Area | Understanding human recognition of material properties for innovation in SHITSUKAN science and technology |
Project/Area Number |
16H01672
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
齋木 潤 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (60283470)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 視覚性短期記憶 / 質感 / 光沢感 / fMRI / 記憶精度 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、光沢感の視覚性短期記憶の心理学的特性と神経基盤の解明に取り組んだ。 表面質感の短期記憶:球形物体の表面質感(光沢と粗さ)の短期記憶に関する行動実験で明らかとなった精度の高い質感記憶に関して新たな知見を得た。(1)記憶インデックス:シミュレーションで定義したチャンスレベルのパフォーマンスを下限、知覚課題精度を上限として、知覚課題に対する相対精度を記憶インデックスと定義し、記憶精度を定量化した。この結果、課題条件に関係なくほぼ0.7-0.8という高い値を示した。(2)知見の一般性:照明モデルを6種に増やした追試でもほぼ同様の結果が得られたことから、高精度の質感記憶は少数の照明モデルによるアーチファクトではなく、一般性を持つ特性であることを確認した。(3)保持期間の効果:記憶保持期間を操作した実験から、照明変化条件において保持期間が長くなると記憶インデクス値が低下する傾向が見られた。高精度の質感記憶は短期記憶に固有である可能性が示唆される。(4)バイアス:知覚課題と記憶課題の間で反応バイアスの傾向に有意な差異が観察された。さらにこの反応バイアスを質感画像の統計量を用いてシミュレーションを行った結果、記憶課題では画像の高空間周波数情報があまり利用されていないことが示唆された。 質感記憶の神経基盤:先行研究の視覚性短期記憶に関連する脳領域同定実験を改変し、質感短期記憶の神経基盤を検討している。光沢感を操作した球体画像を2枚継時呈示した後、数字により記憶する画像を教示する。ブランク期間(干渉刺激を呈示する条件、呈示しない条件を比較する)の後、テスト画像を呈示し、表面属性の変化の方向を答える。当該年度は、行動実験パラダイム及び、適切なローカライザーを開発し、脳機能計測実験の第1段階として干渉刺激を呈示しない条件のみを用いてfMRI実験のデータ収集を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は,概ね順調に推移している。表面質感の短期記憶プロジェクトでは、反応バイアスの分析から興味深い知見が得られており、継続してさらに分析を進めて行く。
|
Strategy for Future Research Activity |
表面質感の短期記憶プロジェクトでは、今年度に計画されている実験を進めるとともに、興味深い知見が得られた反応バイアスの分析に焦点を当て、画像統計量を用いたシミュレーションを含めた分析を進めて行く。 質感記憶の神経基盤に関しては、まず、ブランク期間のMRI信号を多重ボクセルパターン解析(MVPA)し、行動データを有意に予測できる脳領域を同定する。この結果を踏まえて、本来の目的である妨害刺激による干渉に対して頑健な記憶表象の座を明らかにするための実験を行う。 また、当初の計画にはなかったが、多元質感知領域全体で開発された共通の質感刺激セットを活用して、光沢以外の質感に関する視覚記憶の一連の基礎的な実験を行う。これにより、金と黄色、銀とガラスのような他の質感情報に関する視覚記憶の特性を明らかにし、他のグループで行われている知覚実験の知見との比較対照も視野に入れる。
|