2016 Fiscal Year Annual Research Report
マーモセット大脳視覚皮質における光沢情報の処理過程
Publicly Offered Research
Project Area | Understanding human recognition of material properties for innovation in SHITSUKAN science and technology |
Project/Area Number |
16H01683
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
宮川 尚久 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 微細構造研究部, 流動研究員 (60415312)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 神経生理学 / 視覚認知 / 光遺伝学 / 霊長類 / マーモセット / 情報伝播 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究では新世界ザル・コモンマーモセットに様々な表面素材感(陶器、ガラス、毛など)と3次元形状を持つ刺激画像を麻酔下で視覚提示し、マーモセット側頭視覚皮質の上側頭溝底部腹側領域(FSTv)に光沢素材(ガラスおよび金属)に選択的な応答を示す神経細胞集団が存在することを見出した。光沢選択性細胞は皮質上でクラスター状に固まって存在することを示し、この内容をFrontiers in Neural Circuits誌にて発表した(2017年3月)。またFSTvへ投射する領域を逆行性蛍光トレーサーを用いて標識し、脳溝が少ないという新世界ザルの特徴を生かしてin vivoで同定した。投射領域のうちMT crescent(MTc)に改めて電極アレイを刺入し、MTcにおいても光沢応答を示すニューロンがコラム状に存在することを確認した。MTc光沢選択性神経細胞群の応答は、低次元な画像特徴量の線形的な組み合わせで説明できる成分がFSTvよりも大きいことを見出し、2016年の北米神経科学学会にて発表した。現在論文を投稿準備中である。 新規の実験としては、FSTvの神経細胞の選択性がMTcから入力に依存するかを確認するため、この投射軸策の発火活動を光遺伝学の手法を用いて抑制する実験を行った。光抑制条件において統計的に有意なレベルには至らなかったが、光沢刺激、特にガラス画像に対する視覚応答が抑制を受ける傾向が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
FSTvの神経細胞の選択性がMTcから入力に依存するかを確認するため、この投射軸策の発火活動を光遺伝学の手法を用いて抑制する実験を行った。一頭の動物でFSTvの光沢応答性領域へ投射する皮質部位を逆行性蛍光色素で染色してin vivo蛍光イメージング法で同定し、この領域のうち一つに光抑制性機能たんぱくArchaerhodopsin TP009 (ArchT)を導入した。興奮性神経細胞特異的に順行性に発現させるため、AAVベクターとCaMKIIプロモーターの組合せを使用した(AAV1-CaMKII-GFP-ArchT)。4週後に蛍光たんぱくGFPでたんぱくの発現を確認し、視覚刺激提示と脳表からのレーザー光(波長532 nm)照射を組み合わせ、MTcからFSTvへ投射する軸策の視覚刺激に由来する活動を光抑制しつつ、FSTvの神経活動を記録した。光抑制条件において光沢刺激、特にガラス画像に対する視覚応答が抑制を受ける傾向が皮質の深層で見られたが、統計的に有意なレベルには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は以下の手順で研究を実施する。 [1]. 前年度の結果より脳表からの光照射では抑制効果が限定的であることが予測されるため、コントロール実験として光遺伝学の替わりに薬理学的な実験を行う。まず前年度同様、FSTv内で光沢画像選択的な神経細胞が存在する領域に逆行性トレーサーを注入し、投射するMTcの神経細胞群をin vivoで同定する。GABAA受容体のアゴニストであるムシモールを同定されたMTcの小領域に注入し、その神経活動抑制効果がFSTvの光沢選択性に及ぼす影響を評価する。逆行性にラベルされた小領域が複数存在する場合は、順にムシモール注入で抑制する。これによりMTcの神経活動とFSTv神経細胞の光沢選択性の因果関係を調べることができる。この実験では薬液注入と電気生理学的記録を同時に行える多点記録電極を新たに導入する。 [2]. [1]が成功すれば再び光遺伝学の実験を行う。脳表からの照射による光抑制効果が限定的であったため、刺入型オプトロードを使用し、深層のターゲットにより近い位置から光抑制を試みる。[1]同様、FSTv光沢選択性部位に投射するMTc小領域(群)を同定し、ArchTを導入する。その後、MTc小領域の細胞体を光抑制して[1]のムシモールによる抑制の再現を試みる。これに成功すれば、次にはFSTvに投射する軸策への光抑制を、同じくオプトロードを用いて行う。以上により、MTcからFSTvへの神経活動入力とFSTv神経細胞の光沢選択性の因果関係を探ることが出来る。
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Research Products
(11 results)