2017 Fiscal Year Annual Research Report
17世紀アンデスにおける先住民共同体とインカ帝国像の変容
Publicly Offered Research
Project Area | Comparative Studies of Ancient American Civilizations |
Project/Area Number |
17H05112
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
佐藤 正樹 東京医科歯科大学, 教養部, 非常勤講師 (20773774)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アンデス / 植民地支配 / 土地所有 / 先住民共同体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、当初の研究計画に基づき、まずカハマルカ地方の先住民共同体に関する資料読解に専念した。続いて7月末から9月上旬にかけて南米ペルーおよびボリビアで学会発表と史料調査に従事したが、この在外調査では幾つかの発見に恵まれた。一つは、ペルー北部海岸地域(現在のリベルタ県、ランバイエケ県に該当)の先住民共同体に関して非常に興味深い史料を幾つか発見したことである。もう一つは、ボリビアでの学会発表を通じて多くの研究者と交流することが出来たことである。その際、ボリビアのチチカカ湖南岸を中心とする地域でも、17世紀なかばに先住民共同体の大規模な土地の収奪が起きていたこと、それに関する大部の史料がラパス文書館に所蔵されていることが分かったのは特に大きな収穫であった。 以上の夏季在外調査の成果を踏まえ、本研究はその具体的な調査対象をカハマルカ地方、ペルー北部海岸地域、チチカカ湖南岸地域に広げることとした。中でも史料が豊富に残っているペルー北部海岸地域について研究を進め、その進捗を関西中世史研究会において「17世紀ペルー北部海岸における先住民首長たち」として発表した(2017年11月)。ここでは土地の所有権および(共有地や牧草地、耕地などの)土地の性質に関して、主にヨーロッパ史を専門とする研究者から学ぶことができたことも有意義であった。 1月末から3月上旬にかけてスペインで行った在外調査では、17世紀半ばの土地の収奪に関して、スペイン王室に送付された多くの行政文書を検討することが出来た。また、セビリアのインディアス総文書館に世界中から集まっている研究者との交流も研究を進める上で大きな刺激になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
夏季・冬季の在外出張において、期待していた以上に豊かな史料を見つけることが出来たこと、同じく在外出張時に本研究のテーマにとって極めて重要と思われる史料の所在が明らかになったこと、これらの史料的な発見によって研究の分析範囲・深度をともに改善出来たため。また、国内外での研究発表および研究者との交流を通じて議論を整理することが出来たため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず、ペルー北部海岸地域の先住民共同体についての研究をスペイン語の論文にまとめることを目指す(2018年9月投稿予定)。その後、夏季の在外調査を利用して、当初の研究計画通り、アレキパ市で開催されるペルー史学会で研究成果を発表し、スペイン語圏の研究者たちのフィードバックを得るよう努めたい。同じく夏の在外調査では、昨年度に史料の所在が判明したものの館内整備に伴う閉館でアクセスできなかったボリビアのラパス文書館で史料調査を行いたい。帰国後は在外調査で収集した史料の読解に専念し、冬季の在外調査では再びスペイン、インディアス総文書館で史料調査を行う。これらの調査結果を踏まえ、日本語の論文をまとめる(2019年2月投稿予定)。
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Research Products
(3 results)