2018 Fiscal Year Annual Research Report
Studies for the pre-hispanic cultural continuity in the Andes: from the Inca period to the present
Publicly Offered Research
Project Area | Comparative Studies of Ancient American Civilizations |
Project/Area Number |
17H05114
|
Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
大平 秀一 東海大学, 文学部, 教授 (60328094)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | アンデス先住民 / ワロチリ文書 / 文化の継承性 / 遺跡の継続的利用 / 山の神 / 無文字社会の歴史 / 民族誌 / 文化像 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、民族誌的調査を実施し、インカ時代の遺跡・聖地が当時と同質的な意味を継承しながら、現代社会において利用されている事例を提示し、エキゾチシズムと共に物体化された「古代文明」を、先住民史の一部として有機的に捉え直すことにあった。 2018年度は、ワロチリ地域を中心とし、計3度のフィールド・ワークを実施した。また1597年~1608年に同地域の改宗区を担当していた神父・アビラの意図で、先住民の語りがケチュア語で書き留められた「ワロチリ文書」(c.1608)をはじめ、その他の歴史文書・考古資料等の比較分析を行った。その結果、インカ時代の多様な遺跡・聖地が、山の神をめぐり当時と同質的な儀礼的意味を伴い、明瞭な継承性を帯びながら利用されていることが明らかとなった。 先住民原語で書き留められた「ワロチリ文書」は、文字をもたなかったアンデス先住民の歴史・宗教的世界・文化を理解するための貴重な資料である。しかし、これまでその唯一無二の先住民の声は、翻訳は進められても、その本質的な意味は具体性をもって理解・解釈されてこなかった。本研究課題では、フィールド・ワークで得た情報を基に、「ワロチリ文書」に示された山の神々をめぐる先住民の感性・感覚・イメージの分析も進め、深層に迫る新たな理解・解釈も進められた。また比較を目的とし、研究協力者によりクスコ等の民族誌的調査・研究も進めた。 インカをはじめとするアンデス先住民の歴史・文化像は、先住民の柔らかな精神世界を理解し得ない16~17世紀の他者が残した歴史文書を基に、再生産され続けてきた。その結果、アンデスの大地・自然と共に生きた人々の姿からはかけ離れた文化像が定着し、消費され続けている。本研究課題では、これに再検討を迫る大きな成果が得られた。今後、他地域も含め、民族誌・歴史文書・考古資料の比較・分析を多角的に進めていく必要がある。
|
Research Progress Status |
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
|